表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
炎花流水  作者: くまくま33233
参 宿命
26/159

 里は手を挙げる。


「なんですか、里。」

「母巫女様。それは具体的に、どのように感じるものなのでしょうか。」

「良い質問ですね。感じ方は人それぞれと言われています。因みに私はその時、室内にいたにも関わらず暖かい風がどこかから吹いてきたかのように感じました。それは神々の祝福の吐息だったのだと、今でも信じております。」

「そうなのですね。ありがとうございます。」


 里が礼を述べ、話は再開する。里は沙枝に小声で話し掛けてきた。


「神々の祝福やて。えらいこと言われてんなあ、沙枝。」

「もう、やめてよ。きっとそれは燥耶さんだよ、私なんかじゃない。」

「そんなこと言わんときや。沙枝は自分をもっと信じるべきやで。

ま、私は沙枝がどないになったとしても、変わらず何でも言うけどな。」

「ふふ。ありがとう、里。」

「里!沙枝!無駄話はやめなさい!」


 不味まずい、見つかってしまった。良い話だったのに。




 忙しい日々も、何日もこなしていると慣れてくるものだ。沙枝は今の生活に、とてもやりがいを感じていた。相変わらず《守り手》としてのなにかは何も見えてこなかったが、毎日が充実していた。


 それとは対称的に、燥耶との時間は一切進歩がなかった。呼びかけても反応はなく、心を閉ざした元が人因的なものだからか、人間は視界に入っていない、もしくは入れようとしていないようだった。沙枝は心の隅に生まれていた諦めの気持ちが、日に日に大きくなっていっているのを感じていた。自分は《守り手》として、何をすれば良いのだろうか。





 あっという間に日々が過ぎ去り、夏の盛りとなっていた。社の周りにそびえ立つ木々からはせみの鳴き声が降り注ぎ、強烈な日光が地面を、社を、そして人々をく。

 沙枝は里と一緒に一休みしていた。掃除を終わらせ綺麗になった廊下の端で、二人は座り込む。袖は肩までまくられ、腕も足も顔もこんがりときつね色だった。


「はぁーっ。疲れた。この後は何だっけ?」

「なんや忘れたん?この間からみんなその話ばっかりやん。」

「私里以外とあんまり話さないから。ほら、食事別だとさ、少し年違うだけでもう接点がほとんどないんだよね。同い年なの里だけだし。」

「それは仕方ないかもしれんな。私は沙枝と話してる時が一番楽しいけどな!

それよりこの後や。ちゃんと母巫女様の話聞いときいや。私が言えたことちゃうけど。この間言うてはったで。」

「何々?教えてよ。」

「ここではな、入ってある程度経って修練もそれなりに身に付いてきた娘達に、ここにまつられてる秘宝を見せるらしいねん。いうてもその資格をもった娘がそれなりの数溜まってからじゃないとあかんらしくて、私ら二人で丁度良い感じの人数になったて言うてたで。私らはめっちゃ早い方やねん。」

「へえー。なんかすごいのね。その秘宝って何なのかしら。」

「沙枝…。ほんまに話聞いてなかってんなあ。」

「へ?何で?」

「沙枝に大いに関係ある物や。ここに祀られる秘宝といったらただ一つ。


神々が下賜かしされた一振りの剣、《炎花》に決まってるやんか。」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ