表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
炎花流水  作者: くまくま33233
参 宿命
21/159

 老女が最後に放った力強い一言を聞いた時、沙枝はまるで天啓てんけいを受けたかのように、頭から足先まで電流が駆け抜けたかのように、全身が震えたのを感じた。改めて、ここまで導かれた運命の不思議さが頭をよぎる。何度も死んでいてもおかしくなかった場面はあった。しかしその度に沙枝は生かされ、そしてここに辿り着いた。まさに宿命さだめ。目の前にはっきりと道が見えたかのような、そんな気がした。


「沙枝。これからお主には巫女達と一緒に修練を受け、《守り手》としての役目を十分に果たせるようになってもらおう。お主は今まだ、《守り手》としての何もかもが眠っている状態じゃ。なるべく早く、その内に眠るものを開花させる時が来ると良いのう。」

「その時が来たら、私はどうなるんですか。」

「それはわしにも分からん。わしは神々の声を伝えておるだけじゃ。しかしまあ、おそらくその真の力とやらが発現したら、夜継がお主に指示を出しにくるじゃろう。」

「つまりクナイのために働けと?」

「いずれはそうなるじゃろうなあ。あやつが更なる強大な力を欲しておることは明らかじゃ。この地上全てをあやつは手中に収めようとしておる。この機を逃すことはあるまいて。」

「そんな…。」

「沙枝。覚えているかのう?お主に下された処刑という裁きは未だ失われてはいない。ここはクナイの内にありながら、クナイとはまた異なる地。お主がここで修練を積むとなればわしが保護してやれるが、拒否すると言うのならば命はないということになる。」

「しかし…、クナイは私のムラを焼き、沢山のムラの人を殺しました。私はそれをこの目で見たんです。そのクナイのために修練を積むというのは…。」

「沙枝。先程も言うたが、お主が《守り手》として開花した時何が起こるのかはわしにも、誰にも、全く分からんのじゃ。神々から新たなるお告げがあるのかもしれんし、真の力というものが夜継の期待に沿わないこともあるかもしれん。全てが分かってから決断するのでも、決して遅くはないはずじゃ。

少なくともわしはな、沙枝。神々を信じておる。神々が《遣い手》、《守り手》を生み出されたということは、その二人が神々の期待する働きを修めることができれば、地上の生き物達の平和で豊かな暮らしが守られるということじゃ。それはクナイと共に戦うことで達せられるのかもしれんし、はたまた全く別のことが課せられるのかもしれん。

未来は変えられるんじゃ。沙枝。

この先起こりそうなことが嫌なら、自分の手で、起こさなくしてやれば良いだけの話じゃよ。」


 沙枝は、約束を、友を、笑顔を、生命を、思い出していた。全て失っていたと思っていたものを、もう一度取り戻すために。


「わかりました。私も、信じます。

精一杯修練し、自分の手で、自分の力で、新しい未来を掴み取ります。」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ