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炎花流水  作者: くまくま33233
拾弐 決意
155/159

連絡もなしに更新を滞らせてしまいすみませんでした。

先週土曜更新分です。

本日中にもう一話(昨日更新分)更新します。

 まるで目の前の脅威(きょうい)である夜継から目を()らすように、沙枝がそんなことを考えていると。急に視界が開けた。既視感のある光景。白い石が敷き詰められた地面と、一段高いところに建つ見たこともないような大きな建物。夜継と初めて対面したこの場所に、沙枝はもう一度立っていた。


「ここで待っていなさい」


 最後にここまで案内した女官が沙枝たちにそう告げ、その場から去っていく。二人ではとてもではないがもて余すような空間に、沙枝たちは取り残されることとなった。不意に不安が増幅する。見渡す限り二人以外誰もいないことだけでなく、以前ここに来た時のことが否応なしに思い出されることも、その原因となっていた。夜よりも深い闇に染まったあの瞳に射竦いすくめられた時、動揺を覚えずにいられる自信は正直言って少しも無い。でも、あの時とは違う。沙枝はそう自分に言い聞かせる。だって今は、隣に燥耶がいるから。燥耶と一緒なら、なんだってできる。そう信じているから。


「ねえ燥耶」


 今だからこそ、私は燥耶に、伝えなくちゃいけないことがある。


「私……」


「ずいぶん長くかかったな」



 燥耶の方に向けていた顔。弾かれたように前を見ると、建物から、このクニの支配者が、姿を現していた。咄嗟とっさのことに言葉がでない。闇を背負ったその男、夜継は、前と変わらない姿でそこに立っていた。


「まあしかし、もう無理かもしれないと思っていた《炎花の遣い手》をもう一度俺の前に連れてきてくれたことは感謝しよう」


 夜継はそのまま言葉を続ける。こちらのことを考えていないかのようだった。


「さて、折角帰ってきてもらったんだから、また働いてもらおうじゃないか。おい、説明してやれ」

「その必要はありません」


 夜継が振り返り奥に呼び掛けたところで、それを燥耶がさえぎった。少し機嫌を害したような顔で、ゆっくりと夜継はこちらに向き直る。


「……今なんと?」

「ですから、結構です。今ミヤコの外で何が起こっているのか、私は全て承知しております」

「……だったら、話は早い。お前たちは……」

「私たちが起こしたことだからです」


 その言葉を、すぐには理解できないようだった。


「……何だと?」

「私はあなたが何をしたのか知っている。このクニの暗部も。あなたの理想が、どんなに歪んでいるのかも。あなたがこのクニの頂点に立つ限り、このクニと、これからこのクニに征服されるであろうムラに住む全ての人に、未来はない」

「つまり?」

「私はあなたに、勝負を申し込む。私に呼応してくれた、全ての人のために!」


 燥耶はそう叫ぶと、腰に提げていた《炎花》を抜き放ち高く掲げた。陽の光の下でも輝く炎が、燥耶の身長の二倍近くにまで立ち昇る。闘気がみなぎっているのが分かった。


「ふっ、ふふっ、ふはははははは!」


 決意を宿した燥耶を目の前に、夜継は突然顔を伏せ笑い出した。


「突然何を言い出すかと思えば、そんなことか。そうかそうか、お前たちが主犯だったわけだな。おもしろいじゃないか」


 顔を上げこちらを見る夜継。その顔に浮かぶ笑みは、今まで見たどんな表情よりも邪悪だった。

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