十
遅くなりました。火曜更新分です。
突然ですみませんが、本日分と土曜分の更新はお休みになります。よろしくお願いします。
その後は二人、とりとめのない話をしながら夕食を食べた。お互いに踏み込んでいない何かがあることは分かっていたが、そこに触れることは二人ともになかった。
「夕食下げに来たでー」
食べ終わってしばらくすると、里がやってきた。
「わ、びっくりした。いつも里が来るときは足音が聞こえるから分かるのに。そーっと来たの?」
「ま、まあ、そんなとこやな」
「ふーん。ま、いっか。いつもありがとね、里」
「ええって。こんくらい、何ともないことやん。それより、来るときも話し声が聞こえとったで。もう二人は前みたく戻ったんかいな?」
「……うん、まあ、そうかな」
「……そっか。そら良かったな」
「うん。ほら、片付けよ?」
里から目を逸らし、食器の片付けにかかる。しばらくの間里はこちらを見つめ続けていたようだったが、あえて気付かないふりをした。
それから数回は、同じことの繰り返し。朝起きて食事をしたら、燥耶の家に行って響夜と合流。咲を一日看病して、暗くなってから帰る。夜継と対面するその時まで、何かするつもりだったのに。燥耶みたいに何か鍛練をして、夜継に遅れを取らないようにしなくちゃいけないのに。まあ、何をすればいいのかなんて分からないけれど。
響夜も燥耶も、まるであの告白のことなんてなかったかのようにふるまっていた。表面上は、何事もなかったかのような、告白の前と同じかのような、そんな三人の関係。けれどふとした時、それが崩れて、奥にある何かが見えてくる時がある。そんな時は決まって、少し気まずくなってしまうのだ。そしてまた、それすらもなかったこととして流してしまう。三人とも、一度この関係が崩れてしまったときの苦しみを知ってしまったから。もう二度と、あんなぎくしゃくした関係に戻りたくはないから。だから、必死に表面を取り繕って、なんとか今のままを維持しようとする。一歩を踏み出す勇気なんて、三人の誰にもなかった。
そんなことをしていても、時間はどんどんと進んでいく。陽が巡り、また山際から顔を出す。
ついにその時がやってきた。
沙枝はその昇りゆく太陽を見ながら、取り留めもないことを色々と考えていた。結局、ここ数日の献身もむなしく、咲の体調が安定することはなかったし。やろうと思っていた鍛練も全然できていないし。そもそも、私が夜継とどう戦えばいいというのか。本来希望を抱くことのできる光景のはずの日の出を目にしても、沙枝の心を占めるのは不安ばかりだった。
そんな精神状態だったため、沙枝が気付くことはなかったのだが。沙枝の、朝を告げる光を浴びる横顔を、燥耶が何も言わずにじっと見ていた。その表情は、複雑な感情が入り混じっているように見える。
決戦を前に、神に選ばれし少女を見つめ、神に選ばれし少年は何を考えているのだろうか。口を開こうとしない少年の心の内を、少女が知ることはない。
二人を照らす太陽が完全に顔を出した、ちょうどその時。
いくつものムラが、反旗を翻し、一斉に立ち上がった。




