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炎花流水  作者: くまくま33233
間参 感情
138/159

お待たせいたしました。昨日更新分です。


明日こそは……!定時更新を……!

 遠くの山際に陽が沈む。空が瑠璃色へ、そしてもっと深い色へと移り変わってゆく。燥耶が昼間鍛錬をしている間中ずっと考えていた女の子、沙枝はまだ姿を見せない。辺りがすっかり暗くなり、見通せる距離がほとんどなくなっても、燥耶は部屋に入ることなく廊下にたたずんでいた。今にも、角を曲がって沙枝がその姿を見せるだろう。そう信じていても、心配する気持ちが治まることはなかった。


「なにしてんだよ、沙枝……」


 そう呟いたところで、沙枝が帰ってくることはない。


「うーん……。こんなに暗くなると、帰り道も危ない。そうすると、誰か沙枝を守る奴が必要だな。沙枝と一緒にここまで来てくれるような奴が。……しょうがない。俺がその役を買って出ようじゃないか。そうだ。これは仕方のないことなんだ」


 自分を納得させる理由を無理矢理ひねり出した燥耶は、居ても立っても居られない様子を誰かに見られている訳でもないのに隠しながら、沙枝を探しに出ることにした。最も、そわそわしているのが隠せていると思っているのは燥耶本人だけであり、例えばもし里が今の燥耶の様子を見ていたとしたら。

「なんやどしたんや燥耶さん。今日はえらい挙動不審やな」

と言ったに違いないくらいには動きに落ち着きがなかった。それだけ沙枝のことを心配しているという心の表れなのだが。


「待ってろよ沙枝……。俺が、迎えにいってやる」





 勤めをする巫女たちの目につかないようにこっそりと一人で社を出ると、燥耶はミヤコにある自分の家に向かって歩き始めた。知らない内に沙枝とすれ違ってしまわないように、周囲に気を配りながらミヤコの街中を歩く。それにしても。燥耶は思わずまた考える。何があったらこんなにも帰りが遅くなるのか。今日沙枝がやらなければならないはずのことは、俺の家に行き響夜と合流して、咲と幸のところへ向かい避難の説明をして、後は帰るだけ。たったそれだけのはずなのである。しかしまだ帰ってきていない、それには二つの要因が考えられる。一つ目は、無事に用事を済ませ、家に戻り響夜と別れた後、何らかの事件に巻き込まれたというもの。ただ、この可能性は低いだろう。明るい内に帰ろうとしていた場合はこのミヤコでそんなことが起きるとは思えないし、暗くなってからならあの性格の響夜が沙枝を一人で帰すはずがない。夜継に見つかっていたとしたら今頃必ず向こうから何か言ってきているはずだし、とにかくそう判断させるものがないのだ。

 となると、とここまで考えて燥耶の思考に影が差す。もう一つの可能性、沙枝と響夜がまだ一緒にいると考えるのが妥当だ、その結論に辿り着いたから。そしてそれは。こんな時間まで二人でいるということは。二人はもう……。


「いやいや、まだそうと決まったわけじゃない」


 声に出して何とか踏みとどまる。気持ちを切り替え、沙枝を探すことに集中することにした。

 実際、その先を考えたくない、というのが本当のところだった。

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