表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
炎花流水  作者: くまくま33233
拾 前夜
135/159

二十

お待たせしました。

火曜日更新分です。


なお本日の更新も遅れます。

ここのところずれ込む形で遅れてばかりですみません。なんとか修正できるように努力しますので、よろしくお願いします。

 苦しそうにする咲。そのそばに、沙枝はずっとついていた。時折額の布を取り替え、汗をぬぐってやる。何もすることがなくとも、そばにいてその顔を見つめながら手を握っていた。そうすれば、咲がどこにも行かない気がしたから。自分に出来ることはすべてやる。またあの元気一杯の咲に会うために、全力を尽くしていた。





 その様子を近くで、響夜はずっと見ていた。沙枝が必死に看病をしている、その後姿を。そして、考えてしまうのだ。横たわっているのが自分であったとしても、沙枝はこんな風に必死になってくれただろうか、と。勿論、これを沙枝に直接聞く訳にはいかない。というか、自分でも分かっているのだ。こんなの、心配するまでもない。沙枝は優しい。倒れたのが自分だったとしても、しっかりと看病してくれただろう。それでもこんなことを考えてしまうのは、単に沙枝の気持ちを知りたいからに他ならない。そこまで含めて、響夜は理解していた。

 先程汲んできた水が少なくなってきたようだ。何も言わず、響夜はまた外へ出た。水を汲み、戻ってきた響夜に、室内の様子が目に入る。当然、出る前と大きく変わった訳ではない。横たわる咲と、側に座る沙枝。さっきも見たその光景をもう一度目にした時、響夜の中に衝撃が走った。

 そう遠くない未来、沙枝が自分の前に横たわる構図が出来てしまうかもしれない。その事に、今更ながらに気付いたから。

 危険に立ち向かう沙枝を、止めるつもりはもうない。沙枝のことを思うからこそ、沙枝の邪魔はしない、自分の出来る範囲で全力で手伝うと決めていた。それでも、沙枝が危険に飛び込んで行くことには変わりない。この昼が、沙枝と言葉を交わす最後の機会になる可能性は、絶対に0にはならないのだ。むしろ、その可能性の方が高いのかもしれない。このまま何も沙枝に話すことなく、全て己の心の中に秘めたまま、もう一度沙枝と対面したとき、その身体が、物言わぬものであったなら。響夜は正気を保っていられる自信がなかった。

 押し付けかもしれない。迷惑かもしれない。それでも。響夜は決心した。





「ただいま!沙枝、咲どう?」


 幸が帰ってきて声を掛ける。その声で、沙枝ははっと我に返った感じだった。咲のために必死に看病をし、咲が食べられるような料理を作り、暗くなったら自分が分かる範囲で弱く明かりを灯した。全て夢中でやっていて、時間の経過が頭から飛んでいたのだ。


「お帰り、幸。お仕事お疲れ様。咲、今また寝たとこだよ」

「あ、そっか。じゃあ、あんまりうるさくしない方が良かったね……」

「大丈夫。ぐっすり寝てるよ」

「良かった。……なんか、朝よりは落ち着いたように見えるよ。ありがとね、沙枝」

「ううん。こんなことしか出来なくてごめんね」

「いやいや、本当にありがとう。響夜さんも」

「僕こそ、何もしてないから。全部沙枝がやったことだよ」

「ねえ幸、明日も来ていい?」

「そりゃ来てくれるならすごく助かるし、嬉しいけど……。大丈夫なの?」

「大丈夫。朝も言ったけど、私にとって二人が元気でいてくれることは何より大事だから」

「ありがと。じゃあ、また明日ね」

「うん。幸も身体壊さないように、早く寝てね。帰ろっか、響夜」


 響夜と二人で帰路につく。幸が手を振ってくれたのに笑顔で振り返すも、咲が元気になった訳ではなく、すっきりしない気持ちの沙枝だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ