十九
お待たせしてすみませんでした。
昨日更新分です。
なお明日土曜日の更新はお休みになります。
すみませんがよろしくお願いします。
「そんな…。」
前で横たわる咲を前に、そんな言葉しか出てこない。
「ねえ沙枝、何とかならないかな…?」
「それは…、どうかな…。」
「ね、え…。沙、枝…。」
「咲?どうかした?」
「約、束、覚えて、る…?」
「うん。勿論、覚えてるよ。…私、今回その事について話があって来たの。」
「そっ、か…。なら、良かっ、た…。頑張って、ね、沙枝…。」
「ありがと。だけど、咲は大丈夫なの…?すごく辛そうだよ?」
「私、は、大丈、夫、だから。気に、しない、で?」
「でも…。心配だよ、咲…。」
「ほんと、に、だ…ごほっ!ごほっ、ごほっ!」
「咲!無理しないで、寝てて?」
「う、ん…。」
しばらく静かにしていると、咲は眠りに入っていった。それでも苦しいのか、辛そうな表情が顔に貼り付いたままだ。
「咲、このままじゃ仕事も辞めさせられちゃう…。そうしたら、咲は暮らしていけないよ。」
「うん…。そうだ、そう言う幸は大丈夫なの?」
「私は…、大丈夫。今日一日休むくらいなら、怒られるだけですむから。」
「幸…。私、幸も心配だよ。今からでも行ってくれば?帰ってくるまで私ここで咲の看病するから。」
「ほんとに?沙枝も、やらなきゃいけないことがあるんじゃないの?」
「私、二人にはいつまでも親友でいてほしいし、いつまでも元気でいてほしいの。やらなきゃいけないことも大事だけど、それよりも二人を守ることの方が、私には大事。だから、私のことは気にしないで、仕事行ってきて?」
「…ありがと。折角来てくれたのに、なんかごめんね。」
「大丈夫。ほら、早く行ってきな!」
「うん。なるべく早く帰ってこられるようにするね。」
「分かった。行ってらっしゃい。」
幸は心配そうに、何度も振り返りながら家を出ていった。
「さて、と。ごめんね?響夜。私勝手に決めちゃって。」
「いや、大丈夫。僕も看病するって言うつもりだったし。」
「ほんと?…ありがとね。……実際のとこ、咲どうしちゃったのかな。」
「僕には分からないな…。でも、このままではまずいんじゃないかな。」
「そうなんだよね…。かといって、お医者さんに診せるような銭もないし。第一、ミヤコの人じゃない、こんな裏通りに住む咲を診てくれるお医者さんなんていないよ。」
「そうだよね。…取り敢えず咲さんは熱も出てるみたいだし、僕たちに出来る範囲のことはしよう。」
「そうだね。じゃあ…、響夜、水汲んできてくれない?」
「分かった。ちょっと待っててな。」
響夜も家の外へ出ていった。沙枝は一人、苦しそうな咲の前に残される。改めて途方に暮れるような気持ちだった。折角帰ってこられたのに。ミヤコが、そしてみんなが救われたとしても、咲がいないんなら意味がない。そう思った。
「水汲んできたよ。」
「ありがと、響夜。ちょっと貸して?」
響夜から水を受け取る。響夜が水を汲んで来る間に見つけておいた布を水に浸し、咲の額にそっと乗せた。
「うう、ん…………。」
咲は苦しそうなまま。こんなことしか出来ない自分が歯痒かった。




