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炎花流水  作者: くまくま33233
拾 前夜
134/159

十九

お待たせしてすみませんでした。

昨日更新分です。


なお明日土曜日の更新はお休みになります。

すみませんがよろしくお願いします。

「そんな…。」


 前で横たわる咲を前に、そんな言葉しか出てこない。


「ねえ沙枝、何とかならないかな…?」

「それは…、どうかな…。」

「ね、え…。沙、枝…。」

「咲?どうかした?」

「約、束、覚えて、る…?」

「うん。勿論、覚えてるよ。…私、今回その事について話があって来たの。」

「そっ、か…。なら、良かっ、た…。頑張って、ね、沙枝…。」

「ありがと。だけど、咲は大丈夫なの…?すごく(つら)そうだよ?」

「私、は、大丈、夫、だから。気に、しない、で?」

「でも…。心配だよ、咲…。」

「ほんと、に、だ…ごほっ!ごほっ、ごほっ!」

「咲!無理しないで、寝てて?」

「う、ん…。」


 しばらく静かにしていると、咲は眠りに入っていった。それでも苦しいのか、(つら)そうな表情が顔に貼り付いたままだ。


「咲、このままじゃ仕事も辞めさせられちゃう…。そうしたら、咲は暮らしていけないよ。」

「うん…。そうだ、そう言う幸は大丈夫なの?」

「私は…、大丈夫。今日一日休むくらいなら、怒られるだけですむから。」

「幸…。私、幸も心配だよ。今からでも行ってくれば?帰ってくるまで私ここで咲の看病するから。」

「ほんとに?沙枝も、やらなきゃいけないことがあるんじゃないの?」

「私、二人にはいつまでも親友でいてほしいし、いつまでも元気でいてほしいの。やらなきゃいけないことも大事だけど、それよりも二人を守ることの方が、私には大事。だから、私のことは気にしないで、仕事行ってきて?」

「…ありがと。折角来てくれたのに、なんかごめんね。」

「大丈夫。ほら、早く行ってきな!」

「うん。なるべく早く帰ってこられるようにするね。」

「分かった。行ってらっしゃい。」


 幸は心配そうに、何度も振り返りながら家を出ていった。


「さて、と。ごめんね?響夜。私勝手に決めちゃって。」

「いや、大丈夫。僕も看病するって言うつもりだったし。」

「ほんと?…ありがとね。……実際のとこ、咲どうしちゃったのかな。」

「僕には分からないな…。でも、このままではまずいんじゃないかな。」

「そうなんだよね…。かといって、お医者さんに診せるような銭もないし。第一、ミヤコの人じゃない、こんな裏通りに住む咲を診てくれるお医者さんなんていないよ。」

「そうだよね。…取り敢えず咲さんは熱も出てるみたいだし、僕たちに出来る範囲のことはしよう。」

「そうだね。じゃあ…、響夜、水()んできてくれない?」

「分かった。ちょっと待っててな。」


 響夜も家の外へ出ていった。沙枝は一人、苦しそうな咲の前に残される。改めて途方に暮れるような気持ちだった。折角帰ってこられたのに。ミヤコが、そしてみんなが救われたとしても、咲がいないんなら意味がない。そう思った。


「水汲んできたよ。」

「ありがと、響夜。ちょっと貸して?」


 響夜から水を受け取る。響夜が水を汲んで来る間に見つけておいた布を水に浸し、咲の額にそっと乗せた。


「うう、ん…………。」


 咲は苦しそうなまま。こんなことしか出来ない自分が歯痒かった。

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