表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
炎花流水  作者: くまくま33233
拾 前夜
133/159

十八

すみません!

火曜日分です。

投稿したつもりでしたが、されてませんでした…。


なお本日分も遅れる予定です。すみませんがよろしくお願いします。

 春則の言う通り玄関の上がり(かまち)に腰かけてしばらく待つと。


「どうした、沙枝?もうここには来ないはずだったんじゃ…。」


 心配そうな表情の響夜が奥から現れた。春則も一緒だ。


「うん。だけど、咲と幸のところに説明しに行くのは私がいた方がいいかなと思って。だから今日、一緒に二人のところに行こうよ。」

「…燥耶は?」

「今日は社で一人で鍛錬するって。二人で行ってこいって言われたよ。」

「そうか…。燥耶いないのか…。」

「うん。早く行こ?」

「…分かった。一緒に行こう。」

「行ってらっしゃいませ。」


 やけに嬉しそうな顔の春則に見送られ、燥耶の家を出た。





「こっちだね。」


 響夜と二人、ミヤコの街中を歩く。


「詳しいね。その咲と幸って子の住んでるところは燥耶から説明してもらったんだけど、沙枝も知ってるの?」

「うん。前は燥耶と二人で来たんだ。まだ戦に駆り出される前にね。」

「…ふーん。」

「…私、実はね。この二人と約束したんだ。」

「何を?」


 声を大にして言える話題でもないので、響夜の耳元に顔を近付ける。響夜の首筋がほんのり赤く色付いたのが見えた気がした。


「いつか、夜継を倒すって。」


 沙枝の耳元での囁きの余韻を、響夜はしばらくの間噛みしめた。


「じゃあ、その約束を果たしに帰ってきた訳だな。…最後まで頑張ってな、沙枝。」

「うん。ありがと。」

「それと…。」

「なあに?」

「………。いや、何でもない。」

「…?あ、ここ曲がらなきゃ。」

「………。」




 前も足を踏み入れた、ミヤコの裏側。表通りの活況が以前と変わらなかったのと同じように、裏通りの陰惨さもまた変わらないものだった。今にも崩れそうな家々、なくなることのない水溜まり、生気を失った顔をして彷徨(さまよい)歩くぼろを纏った人たち。

 この現状を見て、これから立ち向かわなければならないものへの決意を新たにする。夜継がいる限り、夜継が頂点に君臨し続ける限り、この惨状は終わらない。何があろうと、私と燥耶と二人で、全力を尽くして、夜継を倒すのだ。



 咲の家に着いた。


「咲ー?いるー?」


 戸の向こうからどたどたと足音が聞こえる。勢いよく戸が開き、出てきたのは見知った顔。


「沙枝!助けて!」


 幸だった。


「幸!?どうしたの?」

「咲が、咲が大変なの!」


 幸にすがり付かれて呆然とする沙枝より早く、響夜が反応した。


「入るよ!」


 靴を急いで脱ぎ、中へ入っていく。沙枝も我に返り、慌てて後を追った。


 前も見た、今にも崩れそうなあばら家。その中で、懐かしい顔の女の子が横たわっていた。その顔は土気色で、いつも輝いていた瞳は閉じられて見えない。


「咲!!」


 沙枝は、取り返しのつかないことになってしまったかもしれない恐怖から、その名を叫ぶ。

 名を呼ばれた少女は、ゆっくりと、本当にゆっくりと、瞑っていた目を開いた。


「沙、枝…?」

「咲…!良かった…。」

「どうし、て…?」

「咲こそ、どうしたの?身体、悪いの…?」

「それ、は…。ごほっ、ごほっ、ごほっ。」

「咲…。」

「咲ね、一昨日倒れちゃって…。最初は、軽く風邪でも引いたかなって二人で言ってたんだけど、昨日の晩から急に悪くなって…。」


 答えられない咲に代わって、幸が答えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ