十七
遅れてすみません。
なんとか今日中に更新できました…。
「よし。取り敢えず、沙枝は今日はあの二人の所に行くだろ?」
「うん。なるべく早めの方がいいもんね。」
「分かった。まず俺の家に寄ってから行けよ。行き方はもう分かるだろ?」
「大丈夫。私あんまり迷ったりしないから。ってことは燥耶は行かないってことだね?」
「ああ。俺はいつも通りここで鍛練してるよ。最後まで出来ることはしておきたいしな。」
「分かった。じゃあ行ってくるね。」
「よし。…気を付けていけよ。」
「うん。ありがと。」
「本当、頼むぞ色々…。気を付けろよ、沙枝…。」
「よし!ちゃんと着いた!」
燥耶に自信を持って答えたが、実はちゃんと着けるかどうか不安だった沙枝。一回も迷わずにこれたことに胸を撫で下ろした。
「えーっと…。きっと沙枝ですって言えば伝わるよね…。」
戸惑いながらも門を叩く。
「こんにちはー。沙枝です。響夜に会いに来ました。」
耳を澄ます。何か反応がないか待ってみるも、辺りは静けさが支配したままだ。
「あれ…?聞こえてないのかな?」
さっきよりも強く叩いてみる。
「すみませーん!」
まだ応対がない。
「す、すみませーん!!」
叫ぶのも全力、叩くのも全力になった。息が切れそうだ。
「はい…?どなたでしょうか?」
「はあ、はあ、はあ…。」
やっと門の内から声が聞こえた。春則の声だとすぐに分かったが、体力を使い果たした沙枝にはそれに答える余裕がない。
「今出ますけど…。どなたですかね…?………って、沙枝様!?またいらしたんですか!」
「はあ、はあ、そう、はあ、です、はふ。」
「…随分お疲れのようですが…。どうかなさったのですか?はっ!まさか若様の身に何かが!?」
「いや、違い、ます。」
「…でしたら…。あ、もしかして、私が出てくるのが遅かったですかね…?」
もう答える気力もなく、沙枝は息を整えながら黙って頷いた。
「すみませんでした…!ここ門の先が遠くて…。かなり大きな音でないと中まで聞こえて来ないんですよ。男なら割と強めに叩くくらいで大丈夫なんですが…。」
「いえ。大丈夫、です。大分、落ち着きました。」
「本当に申し訳ないです…。」
「いえいえ。ほんとに、気にしないで下さい。私の力が弱いのがいけないんですよ。」
「そう言って下さると助かります。…それで、今日は何の御用ですか?」
「響夜に一緒に行ってほしいところがあって。」
「ああ、分かりました。では上がってお待ち下さい。お呼びしてきますね。」
「いやいや、家に上がるほどの用では…。」
「でしたらせめて玄関にて座ってお待ち下さい。お疲れのようですし、そこで立ってお待ち頂くのも私の心が痛みますので。」
「分かりました。なんか気を遣わせてしまったみたいですみません…。」
「こちらこそ、なかなか気付かなくてすみませんでした。では、響夜様をお呼びしてまいります。」
春則が相変わらず大きな屋敷の奥へ消えていく。沙枝はといえば汗だくだ。ここに来るたびに何かしらが起きる気がする。ついそう考えてしまう沙枝だった。




