三
縛られた腕や足は感覚をなくし、どのくらい檻の中にいたのかも、今どちらに進んでいるのかも全く分からなくなった。途中いくつも小さなムラを通過したが、人々はおびえた様子で家の中に閉じこもり、沙枝達のすぐそばまで寄ってくる者は一人としていなかった。
やがて石などが転がり、細く曲がりくねっていた道が、綺麗に均された幅の広いまっすぐなものになった。沙枝はこんな道を見たことがなかった。一体どれだけの労力を用いれば造ることができるのだろう。両脇には建物が建ち並ぶようになり、人々の往来も激しい。沙枝はこんなにたくさんの人が集まっているところも、見たことがなかった。
見上げるような大きさの門が近づいてくる。門の左右には水をたたえた深い濠と丈夫そうな柵が広がる。門の内からは沢山の人々の声が聞こえてくる。クナイの人々には《ミヤコ》と呼ばれる、クナイの王都に、沙枝は到着したのだった。
門をくぐり、ミヤコの中に入ると、沙枝達の檻には覆いがかけられ、外の様子を見ることができなくなった。かなり薄暗くなった檻の中で、捕虜達は不安が大きくなっていた。
「これから俺達はどうなるんだ」
「よくは知らんが、噂によると最後まで戦って捕らえられた俺達のような男達は見せしめとして民衆の前で処刑されるらしいぞ」
「なんだって!?そんな……。どんな身分になっても良いからもう一度娘に会いたいのに……」
その会話は狭い檻の中でなぜか大きく響き、皆は言葉をなくす。沙枝も不安が大きくなるのを止められなかった。どうしよう。殺されてしまったら全てが終わりだ。咲達との約束も、九乃さんの願いも、もう果たせなくなってしまう。
静かに荷車が止まり、檻の覆いの間から男が入ってきた。逆光で眩しく、顔が見えない。男は白い布を何枚も手に持っていた。
「今からこれを目隠しとしてつけてもらう。お前達は直接陛下がお裁きになられるゆえ、陛下の御前まで連行するが、その道中をお前達捕虜が目にすることは許されない」
言うと男は一人一人に目隠しをし、足を縛っていた縄をほどいてから腕を前にして縛りなおし、十三人全員をつないだ。
「これ以降陛下の裁きが終わるまで声を出すことを禁ずる。破ったものには手痛い罰を与える。覚悟しておけ」
十三人の捕虜は一列になって王の前へと連行されてゆく。
沙枝は最後尾についていた。つながれた手の縄が引かれてゆくのを頼りに進みながら、決意を固めていた。
ついにこんな非道な行いをしている王に直接会える。罰?そんなもの知らない。言いたいこと全部ぶちまけてやる。




