六
燥耶の部屋に着いた。
「よし、もう一度今後の確認をしよう。おそらくこれがちゃんと話ができる最後の機会だ。」
「では、私は更馬様のところに戻っておりますね。」
頭を下げて部屋を出ていこうとした春則を。
「待て、春則。」
燥耶は呼び止めた。沙枝と響夜もきょとんとした顔で燥耶を見る。
「春則には俺たちの計画を、知っておいてもらおう。」
「燥耶?…どうしたの?私たち以外には内緒にするって決めたんじゃ…。」
「いや、そのつもりだったんだが。………。」
燥耶は非常に言い辛そうな顔で、後を続けた。
「…俺たちがもし失敗した時、それを引き継ぐ人が必要だ。俺たちの大切な人たちを、夜継の力が及ぶ前に避難させるという役割を。」
皆黙った。その通りだ。何が起こったとしても私たちの大切な人たちを守る。それを最優先に考えるならば、計画には直接関わらないがその事を知っていて、万一の際にはそれを引き継げる、信頼の置ける協力者の存在が必要不可欠である。
「春則。俺たちが勝手に決めたことに巻き込んでしまってすまない。この事を知ることで大きな危険があるかもしれない。それでも、お前のことを見込んで頼む。俺たちに、協力してくれないか。」
そう頼み込む燥耶のことをじっと見つめる春則。その顔は、笑顔だった。
「ありがとうございます、若様。喜んで協力致しますよ。」
「…春則。」
「そもそも、しばらくしたらこちらからお願いするつもりでした。若様たちお三方が危険なことに挑もうとしているのは明らかですから、私に何か手伝えることはございませんか、と。若様の方から協力してくれと言われてしまうなんて、感激です。」
「本当にありがとう、春則。二人もそれでいいよな?」
二人はすぐに頷いた。
「春則、これは覚えておいてほしいんだが。俺たちの守りたい大切な人たちの中には、春則も入ってる。」
「若様…。」
「だから、危険が迫ったら、俺たちや他の人たちのことは考えなくてもいいから自分の身を守ることを最優先にしてくれ。」
「私のことまで心配して下さって、ありがとうございます。その言葉、胸に刻みます。」
「よし、じゃあ説明していくぞ。二人も補足していってくれ。やりながら確認していこう。」
「分かりました皆様。」
全ての説明と、確認が終わった。
「…本音を言うのであれば、私としてはお三方が自ら危険に飛び込んで行かれるのは反対です。ですが、ここで私が何を言おうと、お三方が覚悟を決めていらっしゃって、もう引き返すことはないということも理解しております。ですから。」
ここで春則は言葉を切り、三人の目を順に真っ直ぐ見た。
「どうか、お気を付けて。必ずまた、命ある身体にて会いましょう。」
燥耶たち三人が頷くと、春則は笑顔になる。
「それでは、私はこれで。お三方の間でお話があるかもしれませんしね。またご用があればお呼び下さい。おそらく更馬様のところにいると思います。」
そう言うと春則は三人に背を向け、部屋を出ていった。その背中が、やけに格好良く見えた。
すみませんが所用により、この先一週間【22日(木)、24日(土)、27日(火)】の更新をお休みします。よろしくお願いします。




