二
遅くなってしまいすみません。
土曜日更新予定だった分です。
果てが霞んでしまうほど左右に伸びた土壁。
「こ、これが、燥耶の家…?」
開いた口が塞がらない響夜。初めて来た時の自分を見ているようで、沙枝は面白くて仕方がなかった。
「まあ、そうだな。一応、俺の力で建てられた訳じゃないし、距離を感じたりしないでほしいんだが…。」
「いや、今更距離を感じたりはしないけど…。さ、先に言ってよ!」
「すごい響夜!私が初めて来た時とおんなじ!」
「ん、沙枝前に来た時そんなこと言ったか?」
「言ってはないけど、心の中で叫んでたんだからね?響夜の反応が普通だよ。」
「そうか…。それは、済まなかったな。」
「燥耶はそういう奴だから仕方がないとして。」
「おい響夜、そういう奴ってどういうことだ。そういう奴って。」
「まあまあそれは置いといて。沙枝は知ってたんだろう?」
「うん。そりゃ、一回来てるしね。」
「何で教えてくれなかったんだよー!?」
「いやー、それはさ。響夜の驚く顔が見てみたいなー、って。」
「そんな!意地悪だよ沙枝…。…僕、こんなお屋敷に泊めてもらうようにお願いしないといけないの…?」
「大丈夫だって響夜。見た目の通り、大きいから部屋は沢山空いてる。」
「尚更恐れ多いよ…。」
「私も、大丈夫だと思うよ。燥耶の家の人、みんな暖かくて優しいし。」
「本当に…?」
「うん。それに、きっと響夜と友達になる人もいる。毎日楽しく過ごせるはずだよ。」
「友達…?」
「それは着いてから紹介しよう。取り敢えず門まで行くぞ。」
再び歩みを進める燥耶。響夜が我に返り、そのあとを追い掛け始めるまでには、長い間があった。
何度見ても大きいと感じる門の前に着く。もう響夜は圧倒されてしまって、声が発せないようだ。
「こんにちは!燥耶です!只今戻りました!」
戸を叩きながら燥耶が声を上げる。響夜は顔面蒼白、まさに頼むから誰も出てこないでほしいと顔に書いてあるようだった。
「わ、若様!?ご無事でいらっしゃったんですか!只今お開けします!」
戸の向こうからくぐもった声が聞こえた。この声は確実に春則だろう。
「春則さんの声だよね?元気そうだね。」
「ああ。久しぶりに声を聞くことができて嬉しいよ。」
そんなことを言い合っている間に大きな門が内側から開かれる。その瞬間に、一人の若者がすごい勢いで駆け寄ってきた。やはり春則だ。
「若様!もう二度とお会いできないかと思っておりました…!」
「ただいま、春則。俺の身に何が起こったのか、聞いているのか?」
「ええ。社の巫女様が伝えに来て下さいました。若様が行方不明になってしまい、今沙枝さんが探していらっしゃる、と。」
「ということは、大母巫女様が伝えて下さっていたということか…。…ありがたいことだ。」
「若様がいる、そして…。」
春則はやっと燥耶以外にも目を向けた。
「沙枝様!若様を見つけて下さったのですか?ありがとうございます。」
「いえいえ、そんなに感謝されるようなことじゃないですよ。私は、燥耶にまた会いたかったから。だから探しただけなんです。」
「…聞きました、若様?流石、お熱いですねえ。」
「春則…。なんだか帰ってきたなって感じだよ。」
顔が赤くなっていることを沙枝は自覚していた。




