一
大変遅くなりました。申し訳ありません。
木曜日更新分です。なお、本日更新予定だった分は、明日の夜に更新できる予定です。
すみませんがよろしくお願いします。
「道が…。」
いつかも見たように、今までとは見違えるような道幅。今までとは桁違いの人の数。確実に今、沙枝たち三人はミヤコの目の前まで来ていた。予告された日からちょうど五日。ついに沙枝は、ミヤコに、燥耶とともに、戻ってくることができたのだ。
「こんなに…、すごいところなんだ。ミヤコっていうのは。」
初めて来た響夜はとても驚いている。それも当然だろう。沙枝だって、捕虜でなく旅人としてここを初めて訪れていたならば、そうなっていたに決まっているのだ。
「ついに…、戻ってきたね。ミヤコ。」
「ああ。…最後は軍の一員としてここを後にしたんだったな。何というか、信じられない気分だ。」
「うん。…私も。」
本当に燥耶の言う通りだと沙枝は思った。最後の別れなどではないと理解していたはずなのに、心のどこかで二度と戻ってこないのではないかと思っていたようだ。
久しぶりのミヤコは何も変わらず賑やか。勿論そうだ。私たちがどこで何をしていようがここの人たちには関係のない話であり、まさしく他人事といった体で変わらない毎日が営まれる。その事に、そしてその事に今更気付いた自分に衝撃を覚えた。社にいた頃の私自身も、クナイが何をしていようが他人事だと思っていたことを、漸く理解したのだ。
今度は他人事にはしない。強い決意を抱いて、沙枝はついにミヤコへと足を踏み入れた。
「まず初めに、燥耶の家に行くんだったね。」
ミヤコの街並みを歩きながら、響夜がそう声を発した。
「ああ。今そっちに向かってる。…どうする?買い物でもしたいか?」
「はは。きっとこの後も時間はあるよ。それよりも先に燥耶の家に行っちゃおう。」
「…そうだな。」
ここで燥耶は声を落とす。
「なあ…、響夜。お前…、元気ないぞ。」
「…ばれたか。燥耶は心配しなくてもいいよ。これは僕の問題だ。」
「いいのか?…俺にとっては、言いたいこと言ってくれた方がありがたいんだがな。」
「…いや。何も言わない。…今口を開けば全て愚痴になってしまいそうだ。」
「…そうか。なら、そんな顔するな。…沙枝も、心配するぞ。」
「…そうだね。それは、嫌だな。」
「ねえ燥耶!ここ、右だっけ?」
「ああ、そうだ。…行くぞ、響夜。」
響夜は何も言わずに頷いた。
表通りを外れ、住宅が立ち並ぶ辺りに入る。この辺は見覚えがあった。燥耶の家まではもうすぐだ。
「ねえ、当然、燥耶の家の人たちは、今日燥耶が帰ってくるなんて知らないでしょう?」
「まあそうだろうな。」
「じゃあ、皆さんびっくりしそうだね。」
「確かにな。特に春則は前の時以上に騒ぎそうだ。」
あの賑やかな若者を思い出し、沙枝は思わず笑みをこぼした。
「ほんとだね。皆さん元気かな?」
「だと思うけどな。」
「ねえ二人とも、燥耶の家には皆さんって言うくらい沢山の人がいるのかい?」
「そうだよ、響夜。…きっとびっくりすると思うけど、燥耶の家って本当に大きいんだから。」
響夜の驚く顔がありありと予想できる沙枝だった。




