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炎花流水  作者: くまくま33233
玖 蜂起
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十二

すみません。大変遅くなってしまいました。昨日分の更新です。

 またスリナのムラを離れる時がやってきた。稲芽と目を見合って握手する。


「では稲芽さん、行ってきますね。よろしくお願いします。」

「ああ。私たちは沙枝さんにしてもらったことを決して忘れない。必ず君たちの期待に応えようじゃないか。」

「ありがとうございます。心強いです。」


 笑顔で送り出そうとしてくれる稲芽。その下から、心配そうな顔の雪が顔を出した。


「ねえ、沙枝お姉ちゃん。」

「なあに?雪。」

「わたしたちはいいの。お姉ちゃんたちに協力したくてやってるし、みんなでだからきっと大丈夫。でも。お姉ちゃんたちは?三人しかいないんだよ?危ないんじゃないの?」


 分かっていた。もう分かりきっていることであり、何度も考えたことでもあった。


「きっと大丈夫だよ。私も、燥耶も、他の誰にもないものを持ってる。それは、このために与えられたものだと思うの。だから、私のできる精一杯をやるつもり。夜継をこのままにはさせない。」

「…うん。気を付けてね、お姉ちゃん。わたし、元気な沙枝お姉ちゃんにまた会いたいな。」

「分かった。また会おうね、雪。」


 こう言うしかなかった。沙枝にとってかけがえのない二人の顔、咲と幸の笑顔が浮かぶ。あの時と同じ、これもまた約束。私の背中を押す力。死ねない理由が、また一つ増えた。


「…大丈夫だ。」


 こう割り込んできたのは、意外にも燥耶だった。


「俺は君に怖がられているし、信用もしにくいかもしれない。けど、これだけは言える。沙枝は俺が、全力で守る。絶対にだ。」


 沙枝は、自分の顔が赤くなっていることを自覚した。


「…あーあ。見せつけてくれちゃって。」

「おっ、奇遇だな草太くん。僕も同じことを考えていたところだよ。」

「分かってくれますか響夜さん!」

「でもね、君も早くさらけ出してしまえば楽になるのに、とも思うよ。」

「え、ええー…。意地悪ですよ、響夜さん…。そういえば、そういう響夜さんはいないんですか?」

「え?」

「いや、今までの話の流れ的に分かるでしょう。気になる人とかですよ。」

「…いや?何のことやら。」

「あ、今目を逸らしましたね。」

「いや、何でもないんだよ?」

「…はあ。そりゃ、俺もすぐにばれるはずですね。傍から見たらこんなに分かりやすいなんて。」

「いや、だから…。」

「なになに?何の話?」

「さ、沙枝!?何でもない、何でもないよ?」

「?」

「ま、まさか、響夜さんの、って…。……………俺より辛いじゃないですか…。」

「ん?何か言ったの?草太くん。」

「いや、何でもないです。……自分のことには鈍感なのか…?それとも燥耶さんしか見えてないのか…?」

「ほ、ほら沙枝、そろそろ行こう?」

「そうだね響夜。よし。」


 沙枝はムラに向かって頭を下げた。また来たいな。


「今度こそ行ってきます。本当にお世話になりました。またよろしくお願いします。」


 三人はスリナのムラに背を向け歩き始めた。


「またね!沙枝お姉ちゃん!」


 雪のその声が、やけに遠くから聞こえた。

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