八
すみません。
寝落ちしてしまってました。
日付をこえてしまいましたね。
申し訳ないです。
次回は通常更新となりますので、よろしくお願いします。
更に東に歩く三人。道すがらには家や店、宿が時折あり、旅には困らなかった。行きが森の中を進み野宿の繰り返しだったことを思えば、快適な旅路だ。
「ねえ、燥耶。」
「うん?」
歩くにも慣れてきた沙枝は燥耶に話しかけていた。ある言葉を、聞きたかったのだ。
「燥耶は、さ。なんで《炎花》を置いていってくれたの?」
「沙枝は一人になっちゃう訳でさ。身を守るものが必要かなと思ってね。…それに。」
「…?」
「沙枝のこと、信じてたから。…俺に、《炎花》を、届けにきてくれるって。」
嬉しかった。沙枝が求めていた言葉とは違ったけれど、心が温まる。
「実際、届けにきてくれたろ。沙枝に、もう一度会えた。それだけで俺は十分だ。」
「…ありがと。でも、《炎花》が手元になくても私は燥耶を探しただろうけどね。」
「どうやって?あてもないだろう?」
「それでも探すの。燥耶ともう一度会うためだったら私、何でもできたよ。」
「…沙枝。改めてありがとう。今俺がここにいられるのは、沙枝のおかげだ。」
「…うん。とにかく、もう一度会えてほんとに嬉しいよ。」
そのまま、二人とも黙る。周囲の音が、やけに耳障りに聞こえた。
「そのおかげで、僕にも会えた訳だしね。」
その妙な沈黙に、割り込んでくる響夜。
「そうだね。響夜がいなかったら、また燥耶に会うこともなかったと思うし。ありがと、響夜。」
その響夜にも、沙枝はそう笑顔で応える。響夜もその言葉を聞き笑顔になるが。
「…?」
どこかその笑顔に、陰があるように見えたのは、気のせいだったのだろうか。
「沙枝。もうすぐ右に曲がれってよ。」
「う、うん。分かった。」
沙枝は取り敢えずその場では追及しないことにした。
スリナのムラは道からはずれてそうたたないうちに見つかった。やっぱり行きも道を通れば良かったと少し思うものの、いやしかしそれでは雪に会えていなかっただろうし、このムラに寄ることもなかったなと思い直す。
ムラの入り口に立った三人。どうしようと思っていると、
「あら、沙枝さんじゃないかね。」
と知らない主婦に話しかけられた。
「ええ、そうです。」
「いやー、また来てくれるなんて嬉しいねえ。私もあの宴会にいたんだけど。覚えてないよねえ。」
「…えーと。」
「ははは、いいさ。沢山人もいたしね。それより、沙枝さんのおかげでほんとに助かってるよ。川があるって素晴らしいね。」
「こちらこそ。助けになれて嬉しいです。」
「いい娘だねえ、沙枝さんは。うちの娘にも見習ってほしいくらいだよ。…ところで、今日は若い男を二人も連れてるね。沙枝さんのオトコかい?」
「いやいや、そんなんじゃないですよ!」
「へえ?そうかい?二人とも格好いい男じゃないか。」
「やめてくださいって。そりゃまあ確かに、二人とも格好いいですけど…。それより、稲芽さんを呼んで頂けませんか?」
「あ、逃げたね…。分かった、呼んでくるよ。少し待ってな。」
女はにやにやしながら稲芽の家に向かっていった。後ろの二人の方に、振り返ることのできない沙枝だった。




