五
「それで、さ。同じことが、燥耶にも起こりえる訳じゃない?」
「そうか。そう、だな。俺の家族は、ミヤコに住んでる。押さえようと思ったら、夜継にはすぐだ。」
「そう。だから今ここで、夜継に対して反乱の意志を示したとしても、また同じことが起こって私たちの自由が封じられちゃうと思う。」
「うん。悔しいけど、沙枝の言う通りだ。」
「だからさ、普通にミヤコまで戻ることにしようよ。」
「ん?どういうことだ?」
「普通にミヤコまで歩いてるふりをして、通り道にあるムラに呼び掛けるんだよ。今から何日後に、一斉に反乱を起こして下さいって。私たちはそれまでに、大切な人たちを安全なところに匿っておけば大丈夫なんじゃない?」
「ああ…、確かに良い案みたいだけど…。難しくないか?本当に間に合うかどうかもわからないのに。」
「でも、やらなきゃ。みんなの安全も守って、夜継も倒すんだったら、これしかないよ。」
「分かった。俺も出来る限り頑張るよ。…チャンスは一度きりになるな。」
「きっとどんな方法をとったって一緒だよ。だから、もっと元気に、強く、ならなきゃね。」
「そうだな。…あの日の水準に力が戻ったら、出発することにしよう。」
「うん。」
そのまま、二人とも何となく黙る。思うところが色々あった。と。
「話は聞かせてもらったよ。」
またも急に聞こえたのは、響夜の声。
「僕も君たちと一緒に行こうじゃないか。」
「ええっ!響夜も?私が言うのもなんだけど、危ないよ。」
「そうだぞ、響夜。このムラを守り、より一層開発するんじゃなかったのか?」
「そのつもりだったんだけどね。なんだか重大な話を聞いちゃったし、それに、折角里のために再興したムラだもん。どうせなら、里を迎えに行きたいなと思ってさ。」
「そんな軽く…!」
「軽くない。僕にとっては大事な決断だよ。ここまで面倒みたんだ、最後まで付き合わせてくれないか?」
「…このムラはどうするんだ?」
「他のみんなに任せるよ。里を迎えにいくってことなら、みんな納得してくれるでしょ。」
「ね、ねえ、響夜…。本当に大丈夫なの…?」
「大丈夫だって。自分の責任は、自分で取るしね。それより、自分たちの方は大丈夫なの?」
「何で?」
「これから途中のムラで説得しながら戻るんだろう?そんな弱気で、多くの人を動かせるのかい?」
「言われてみれば、確かにな…。」
「ここで、僕の出番。僕、自分で言うのもなんだけど、人を説得したりするの、結構得意なんだ。」
「そうなの?」
「じゃなかったら、このムラの再興なんて出来てないよ。ね、どう?一緒に行こうよ。」
「そこまで言うなら…。いいんじゃないか、沙枝?」
「うん、そうだね…。一緒に行こうか。」
「よし。そうと決まれば明日から準備するよ。協力してくれてるみんなのムラにも、説得しに行かなきゃな。」
「うん。よろしくね。」
「ああ、俺からもよろしく。」
こうして、クナイへの反乱は、誰も気付かない程ひっそりと、始まった。




