零
初執筆です。温かく見守っていただければ幸いです。
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老女はいつからか分からないほど前からそこに座っていた。
周囲は闇と静寂に包まれ、老女が身につけている目立つ巫女装束でさえ定かに見えないほどである。
音が無い。虫さえ、いやどんな生き物さえ息を潜めてしまったようだ。
澄んだ、それでいて濃密な空気がその場を覆っていた。
どのくらいの時がたっただろうか。深かった闇が少しずつ薄れゆき、東の空に一日の始まりの兆しが見え始めた。
変わらず静かな決して大きくはない部屋の中に、その部屋の中央に置かれた長い剣に、そして老女の微動だにしなかった肩に、強く確かな光が差し込んだ瞬間。老女は不意に大きく目を見開き、右手に握った紐を勢いよく引いた。
しばらく後、老女の前に静寂をかき消しながら現れた大勢の巫女に対し、老女は叫んだ。
「《炎花の遣い手》が現れた!皆の者、心して備えよ!」
その声がその場に響きわたったちょうどその頃、遠く離れた二つの地で、新たな生命の誕生を告げる、
産声が、
同時に、
あがった。