包丁の使い方
突如レビに向けられた包丁に、司の心拍数があがる。
「司はこの包丁をどう使う?」
レビが尋ねる。
「どうって…。野菜を切ったり…。」
「……普通はね。でも、この包丁は人を刺すこともできる。逆に人を守るための武器とすることもできる。要は使い方次第。」
レビは包丁を少し上に投げて半回転させると、今度は柄の方を司に向けた。
「オーディンは力を世界の支配に使おうとし、おれ達はそれを止めようとしている。」
「能力者は貴重なんです。私達ノルンが保護できれば、安全な場所に匿います。ただ、オーディンに拉致されると…。」
そこまで喋り、北条恵は口ごもった。
代わりにレビが話し出す。
「…もし、オーディンが先に司を拉致すれば、オーディンへの忠誠を誓わせる。従わない者は監禁され、従うまで拷問にかけるか、その場で殺される。」
「拷問…。殺す…。」
なんだか恐ろしい言葉だが、司には実感が沸かない。
「力を組織のために使わなければ、自分達を脅かす者とし、殺すのです…。能力者を止められるのは、能力者だけですから。」
司はごくっと唾の飲み込む。
「そして残念ながら、俺たちノルンは少ない。単純な戦力となる人数は、オーディンはノルンの3、4倍…。」
「3、4倍…。」
司はその数を聞き、絶句する。
「ノルンは戦うことを強制しない。だから戦わないで隠れているだけの者もいる。」
レビが事情を説明する。
「それに対して、オーディンはほとんどが戦力化される。まあ最初に悪に入っちまえば、従うしかない。どっかの国みてーなもんだ。」
レビの言葉はどことなく寂げだった。
「ただノルンは一人一人の能力が強力です。数は少ないですが、戦況がなんとか均衡を保っているのもそのおかげです。」
「久しぶりに能力者をノルンで確保することができました…。司には、今日から私達と一緒に戦ってほしい。」
恵は司の目を真直ぐと見据えた。