Knee-Deep in The Dead
カクヨムに投稿しよかなぁ、とおもてた話。
10万字も書き続ける度胸がないけども、まぁ、面白そうな設定かなぁ、と思ったので、取り急ぎ導入部分を、書き殴りました。誤字脱字ごめんね。
過去FPSキチガイだったころ、こういうゲームがやりたかった。
Knee-Deep in The Dead
「サニー、準備よろし? 」男の声が、金属の壁、金属の床、その隅々にに響き渡る。男は囁いたつもりだったが、その反響音の大きさにひやりとした。
「ええ、いつでも。」サニーと呼ばれた者が反応する。男のすぐ後ろに、サニーは居る。耳元で囁いている。美しい、女の声。
「OK.突入する。5.4.3...」男がカウントダウンを始める。男はショットガンのピストル・グリップを右手で握っている。その手にはじっとりと汗をかいている。そして、カウントダウンが進むと共に、握る強さが強くなる。
男の左手はエア・ロックの開閉スイッチにかかっている。男はゼロ、と言うと同時に、スイッチを強く叩いた。ショットガンを素早く両手で握り直す。マサカ・M2。ポンプアクション式のショットガン。しかし、排莢口が下にあり、トリガーを引いたままポンプアクションを操作する事で、連射もできる。その事を男はよく知っていた。
男が金属の床をコンバット・ブーツで強く蹴った。高い、金属の音が響いた。
部屋に飛び込むと一体、影を見つけた。「Target! 」男が叫ぶ。銃口の先には異形が居る。豚と人を掛けあわせ滅茶苦茶にしたような、何かが居る。
豚は男の姿をひと目見ると、屠殺場であげるような叫び声をあげた。豚の手にも、ショットガンが握られていた。豚が銃口をあげ、男に向ける。
男が先にトリガーを引いた。銃口の先から火花が飛び散り、豚が大きく仰け反った。大きな悲鳴をあげた。
「クソッタレ! 」男が悪態をつく。そしてトリガーを引いたまま、一回、二回とポンプを操作する。銃口から一回、二回と火花が飛び散った。二回目の弾丸が豚の頭に当たったらしい。豚の頭は、赤い彼岸花のように砕け散っていた。
「Tango Down.Clear! 」男が注意深く、部屋に入っていく。「サニー、リロード頼む。」男が無造作にショットガンを背後に放り投げると、「了解」と、サニーが受け取った。
男は腰から大口径のリボルバーを抜く。豚の頭に花を咲かせるには十分な口径の大型拳銃。「サニー、後どれぐらい"奴ら"は居るんだ? 」男は一歩一歩、踏みしめるように歩を進める。「五から、十。そんな感じだわ。」オーケー、どうぞ。サニーが答え、男にショットガンを渡す。男はサニーの方向を見ず、受け取る。「ありがとよ。」
「フーライ、後ろ! 」排気用ダクトから歩く死体が飛び出し、男を拳銃で撃った。「ヒット! 」サニーが叫ぶ。「クソッ! 」男が素早くそちらを向き、ショットガンで歩く死体を撃ちぬく。頭部に当たり、脳漿が飛び散った。
「やられた。アーマーはまだもつか? 」男が聞く。「ええ、まだ。でも、敵の数が多すぎると思う。血液が要るわ。」サニーが答える。
弱った。通信塔ブロックに輸血パックなんてあるかどうか。オリエンテーションを受けた時、メモでもとっておけば良かった。男はそう思った。
「一度引き返すべきよ。部屋まで戻れば輸血できる。」サニーが言った。「いや、ダメだ。生存している人間が居るかもしれない以上、早く連絡を取らないと。俺たち以外の奴が長く生きてられると思うか? 」男が言うと、「私の目的はあなたの生存よ。それ以外の事は興味がないわ。」と返ってきた。男はそうかよ、とため息をついた。
男は歩を進める。当然、サニーも一緒だ。「管制室までは後どれぐらいある? 」男が尋ねた。「あなた、配属の兵士でしょ? 」と、サニー。「来て四日か五日でこの騒ぎだよ。覚えてるわけない。」男が答えた。
「記憶ではもうすぐのはずよ。見取り図、覚えてないの? 」と、サニー。
「覚えてくれる相棒が居るんでね。」と、男は鼻を鳴らした。
「あら、そ。」サニーが男の耳元でしゅるしゅる、と音を鳴らした。
「しっ、何か居る。」男が合図を出した。男が顎をしゃくりあげ、通路の角を指す。曲がり角の先から音がした。複数の何かが音を立てていた。
「おい、天井から響いてくるぞ。」男が小声で言う。「虫を模倣したアザーかもね。」と、サニー。男が腰のホルスターからリボルバーを抜き、サニーに手渡した。「複数来るとマズい。バックアップ頼む。」「あなた、どれだけ自分に血液が残ってるかわかってるの? 」「万が一、アーマーで消費するよりはマシだろ。」そうかしらね、とサニーがため息を吐いたので、男の首元に吐息が当たった。
二人は角のすぐ手前の壁に背を預ける。「サニー、角から覗いてくれるか? 」「ええ、それが無難ね。」サニーが首を伸ばす。「何も居ない……いえ、居る。蜘蛛を模倣したアザーね。天井に二匹、床に一匹張り付いてるわ。」「了解。俺が天井、お前が床だ。サニー、準備よろし? 」サニーが首を引っ込める。「ええ、いつでも。」男がカウントダウンを始める。5.4.3...
ゼロ! 男が角から飛び出す。天井には二匹の蜘蛛。巨大な蜘蛛。野球で使うグローブぐらいはあるだろう。一匹目に照準を合わせ撃ち抜くと、蜘蛛は弾け飛び、緑色の体液と、黄色と白と黒の斑色の肉片をまき散らした。生き残った方の蜘蛛が耳障りな高音を響かせた。「One Down! 」男は素早く二匹目に照準を向ける。二匹目が男を食い殺そうと飛びかかってきたその時、ショットガンから発射された散弾は蜘蛛に命中し、男の船外活動マスクのゴーグルを体液まみれにした。「見えない! 」男が叫ぶ。三匹目の蜘蛛がカタカタと床を鳴らす音と、仲間を殺されたからか、餌を見つけたからか、興奮して叫ぶ音が聞こえる。「動かないで! 射撃が苦手なの知ってるでしょう! 」サニーの声が耳に入る。「外すなよ! 」と、男。銃声が耳元で鳴り、蜘蛛の断末魔が聞こえた。
ゴーグルをぬぐうと、三匹の蜘蛛の死体があった。「なんとか、ね。血が欲しいわ。」サニーが言った。「帰ったらたらふく飲ませてやるよ。」と男が言った。
二人はしばらく進み続けた。そして、「ここか? 」男が尋ねた。二人の前には管制室、と書かれた両開きのドアがあった。「図面的にも、書かれている文字からしても、間違いないでしょうね。」と、サニー。「ああ、神様。今日もなんとか一日を終えられそうだ。」男が皮肉交じりに呟くと、そんなの居ないって言ったでしょう。とサニーが冷静に言った。
男がドアのコントロールパネルを操作すると、音を立てドアは開いた。「これで今日の任務は達成、ってわけだ。勲章でも欲しいもんだね。」と男が言った。「まだ終わってないわ。研究室ブロックに呼びかけて、部屋に戻る。それではじめて任務達成よ。」と、サニー。
部屋に入ると、前面はガラス張りで、建物の外を見れるようになっていた。「こいつを見ると、本当に火星に居るんだな、って気になるね。やれやれ、なんでこんな所で俺はエイリアン共と戦ってるんだろう。」男はそう言って、無造作に通信コントロールパネルに近づいた。
それがいけなかった。
背後のドアロックがいきなり開き、豚の異形が飛び出してきた。手には拳銃が握られていて、男に照準をあわせていた。「フーライ! 」サニーが叫ぶ。間に合わない。男はそう思った。
その時、赤黒い、瘡蓋に似た肉片が男の背後から飛び出し、刃状になり、豚の首を掻き切った。豚はごぼごぼ、血液が泡立つ音を立て、糸の切れた人形のように倒れた。「サニー……」男が言う。「思い出したよ。ヤツが出てきた所に血液パックがある。早く飲んでくれ。持たない……。」男がよろめき、崩れ落ちた。肉片がしゅるしゅる伸び、豚の死骸の脇をくぐり抜ける。豚が居た小さな隠れ家。それは施設内に点在している、緊急用セーフルーム。そこには弾丸や医療品、血液パックが置いてある。肉片がそれらを掴んでは落とし、ひっくり返す。やっとB型の血液パックを見つけると、肉片は注射器のような形に変わり、血液パックに突き刺さり、音をたて飲み始めた。
男は血液をいくらか補充したので、なんとか起き上がり、座った。肉片は血を飲み続けた。男がこう言った。「……オリエンテーション、いくらかは覚えてたな。」
これが、火星のテラフォーミング・ステーションに赴任して二週間の兵士、フーライ・ベラドナ曹長と、フーライ曹長に寄生したアザー、サニー。その二人の通信塔ブロックでの記録である。




