ロジーナとアリア、サーナを迎えに行く
ロジーナとアリアは魔術師協会本部にいた。
今日から数日間、サーナが泊まりに来る。サーナは魔術師協会本部までは自力で来られるとのことだったので、二人はサーナを迎えにきていた。
動物使いであるサーナにとって、アリアの住む山里は興味深いところであるようで、合宿中は盛んにアリアに土地の様子を尋ねていた。そして、合宿が終わったら、お互いの師匠の許可をとり、訪問する約束をしていたのだ。
「サーナちゃーん」
アリアはめざとくサーナの姿を見つけて、大きく手を振った。
「アリアちゃーん」
サーナは応えるようにこちらへ駆けてくると、ロジーナの前でピタリと足をとめ、
「ロジーナ先生、こんにちは。よろしくお願いいたします」
と、深々と頭を下げた。
ロジーナは肯きながらニッコリと微笑むと、軽く会釈した。
「ロジーナ先生、ごきげんよう」
顔を上げたロジーナの目に頭に派手な羽根飾りをつけた、ふくよかな白髪の老女の姿が映った。足元は真っ赤なピンヒールだ。
「シルビィア先生……」
ロジーナの呟きに、シルビィアはパール入りの真っ赤な唇の口角をニコッと上げた。
「お久しぶりですわね。すっかり、素敵なレディになられて……」
シルビィアはラメ入りの青いアイシャドーの入った目を細め、
「孫がお世話になります。よろしくお願いいたしますね」
そう言って、軽く頭を下げる。頭の羽根飾りが大きく揺れた。
「サーナちゃん、シルビィア先生のお孫さんだったんですね」
ロジーナは顔が引きつりそうになるのを必死にこらえ、満面の笑みを浮かべた。
「ええ。ご厄介になるのに、ご挨拶を欠いたままでは……。クレメンス先生にも、よろしくお伝え下さいましね」
シルビィアは小首をかしげ、ニッコリと笑った。
「はい」
ロジーナはニッコリとそう返事するしか出来なかった。
「アリアさん。よろしくお願いいたしますわね」
シルビィアはアリアに視線を移して言った。
「はいっ」
アリアはシルビィアの派手な出で立ちに臆する様子もなく、元気よく返事をする。
「サーナ。ご迷惑をおかけしないようにするのですよ」
「はい。おばあちゃん」
サーナはニッコリと肯いた。
「では、あたくしはこれで。みなさまごきげんよう」
シルビィアはそう言うと、腰をゆらゆら揺らしながら、ゲートへと去って行った。




