サーナ、能力について話す
「ネコちゃん、帰ってこないね」
ベッドに上がり、寝る準備をしながらアリアは言った。
朝、窓の隙間から外に出ていったサーナの猫がまだ戻ってきていなかった。
「近くにいるみたいだから大丈夫です。ミーアは好奇心旺盛なコなので、あちこち探検しているみたいです」
サーナは髪を梳きながらアリアの方を向いた。
「サーナちゃん、どこにいるか分かるの? 」
アリアはベッドの上段から、身を乗りだすようにして尋ねた。
「正確な場所は分からないけど、近くにいるのはなんとなくわかるんです」
サーナはそう言ってニッコリ微笑む。
「すごいね」
自分以外の生物がどこにいるのかわかるというのは、一体どんな感覚なのだろう。
アリアには想像もできない。
「全然すごくないです。お師さんみたには分かりません」
サーナは首を横に大きくふった。
「ねえ、サーナちゃんのお師匠様ってどんな方なの? 」
アリアはロジーナとクレメンス、コーネリア、カルロスという4人の師範魔術師をよく知っている。が、サーナの師匠はアリアの知っている師範魔術師たちと少し違うような気がした。
「私のお師さんは、大伯父さんにあたります。おばあちゃんのお兄さん」
「へぇ……。もしかして、サーナちゃんって魔術師一家の出身? 」
「ん~。お父さんとお母さんはあまり魔術が得意ではないみたいです。おばあちゃんは師範魔術師ですけど……」
「おばあちゃんが師範魔術師なのに、おばあちゃんに入門しなかったんだ」
魔術師協会のルールでは親や兄弟には入門できないが、祖父母は問題ないはずだ。
「おばあちゃんは鳥使いだから、動物使いのお師さんに入門した方がいいってなったみたいです」
「じゃあ、サーナちゃんも動物使いなの? 」
「はい。動物使い目指して頑張っています」
サーナはそう言うとニコッと微笑んだ。
アリアも微笑み返したが、心の中では首をひねっていた。
動物使いというのはどういう魔術を使うのだろうか。
アリアは今までそういった術を教わったことはなかったし、ロジーナやクレメンスがそういう術を使うところをみた記憶もない。
「アリアちゃんは専門は何にするんですか? 」
考え込んでいたアリアはハッとしてサーナの顔をみた。
「ん~。まだよく分からないけど……」
アリアは専門について考えたことが一度もなかったことに気がついた。
「お師匠様が私には火の才能があるっておっしゃるから、たぶん火にすると思う」
そう言いながら、アリアは火の魔術を使うのがけっこう楽しいと気がついた。
鬼カルロスは大嫌いだし、訓練も半端なくキツいが、でも、逃げ出したいと思ったことは一度もない。それどころか、少しずつ上達してる感覚があって、楽しく感じることもなくはなかった。
「火の術ですか。アリアちゃん凄いです。私はちょっぴり苦手なのです」
サーナはアリアに尊敬のまなざしを向ける。
「凄くなんかないよ。サーナちゃんのが凄いよ。私、動物がどこにいるかなんて、全然わからないもん」
アリアは首を小さく横にふりながら言った。
「私、合宿に参加できて良かったです。私のまわりには動物使いしかいません。アリアちゃんやカトリーナちゃんみたいな、動物使いじゃないお友達ができて、とっても嬉しいです」
サーナは両手を胸の前で合わせるように握りながら、嬉しそうに微笑んだ。
「私も女の子の魔術師のお友達はいないから、サーナちゃんやカトリーナちゃんとお友達になれて良かった。これからも、よろしくね」
アリアはニッコリと微笑む。
「はい。こちらこそよろしくお願いします」
サーナは目をキラキラさせて満面の笑みを浮かべた。




