カトリーナ、アリアの部屋を訪れる
夕食の後、3人はアリアとサーナの部屋に集まった。
「二段ベッド。羨ましいわ」
カトリーナは部屋に入るなり、二段ベッドのハシゴに手をかけながら言った。
「カトリーナちゃんとこは違うの? 」
「あたくし、ひとり部屋ですのよ。せっかくの合宿なのに。変なところで特別扱いされるの、ホントに迷惑ですわ」
カトリーナはアリアの問いにそうこたえながら、ハシゴの段を両手で掴んだ。
「そういえばカトリーナちゃんって、一般市民じゃない感じだよね」
「ええ。父は侯爵ですの」
「すっごーい。カトリーナちゃんってお姫様なのね」
アリアは目をキラキラと輝かせる。
「すごいことなんて、何一つありませんわ。たまたま生まれた所がそうだっただけ。あたくしの実力とは全く関係のないことですわ」
カトリーナは視線を斜め下に落とす。
「そうかもしれないけど。でも貴族だなんて憧れるぅ」
アリアは少しうっとりとした声を出す。
貴族といえば、きれいなドレスを身に纏って、優雅にお茶会をしたり、ダンスをしたりと、女の子にとっては憧れの世界だ。
「貴族なんて、自分にはたいした実力もないくせに、エラそうにお高くとまってる、いけ好かないヤツらばっかりでしてよ」
カトリーナは憎々しげに顔をゆがめた。
「貴族もいろいろ大変なのね……」
アリアはそんなカトリーナの様子に、少し驚いた。
アリアは生まれてこのかた、貴族とは全く接点がなかった。
だから、なぜカトリーナがそこまでこじらせているのか想像も出来なかった。
「お二人が羨ましいですわ。父も母もあたくしが魔術師になることを快く思ってらっしゃらなくて……」
カトリーナはうつむいた。
「私もすんなり弟子入りしたわけじゃないよ」
アリアの言葉にカトリーナは「え?」と不思議そうに顔を上げた。
「私のお父さん、魔術師だったけど、私が生まれてすぐに事故で死んじゃって、お母さんもその後すぐに……。で、私は伯母さんのとこに引き取られたの」
「そうでしたの……」
カトリーナは瞳をうるませる。
「伯母さんも、伯父さんも、私が魔術師になるの反対してて……。なんとか説得して、やっとロジーナさまのところに弟子入りしたの」
アリアはそう言って微笑んだ。
「アリアちゃん。あなた、とっても素敵。あたくし、あなたとお友達なれて良かったわ」
カトリーナはそう言うと、アリアの手を取った。
アリアは少し驚いたが、ニッコリとカトリーナを見つめかえした。
「お二人とも、大変だったんですね。私、尊敬します」
サーナは胸の前で祈るように手指を組み、目をキラキラさせながら、二人を見つめていた。




