アリア、食堂で夕食を食べる
夕食メニューはポーテーキだ。
「いただきます」
アリアとサーナとカトリーナはそう言うと、それぞれ食べはじめた。
アリアとカトリーナはナイフとフォークを持ち、慣れた手つきでステーキを切っていく。
サーナは少しの間、ステーキをジッと見つめると、おもむろにフォークをその中心にボフっとつきたてた。
アリアとカトリーナが顔を上げ、サーナをみる。
二人の見守るなか、サーナはステーキにかぶりついた。
「ちょっ、ちょっとサーナちゃん……」
カトリーナは目を丸くする。
アリアも口をポカンと開け、サーナを凝視した。
上手く噛み切れないのか、サーナは肉にかぶりついたまましばらく悪戦苦闘していたが、なんとか噛み切れたらしく、歯形のついた残りの肉を皿にもどした。
サーナの手も口もソースでドロドロだ。
隣に座っていたカトリーナが、サッとふきんを出し、サーナはに渡す。
「ありがとうございます」
サーナは口をもぐもぐさせながら、ふきんで手を拭う。
「サーナちゃん。こうやってナイフで切るのよ」
カトリーナはそう言うと、手本を見せるようにゆっくりと肉を切りはじめた。
サーナはナイフをとり、カトリーナの見よう見まねで肉を切ろうとする。
が、力加減が上手くいかず、ナイフは肉の上をつるりとすべり、付け合わせのポテトにぶつかる。
「あっ」
正面に座っていたアリアに向かってポテトが飛んでくる。
「仕方ない子ね」
カトリーナはサーナの皿を奪い取ると、肉を一口大の大きさに切り分けはじめた。
「ありがとうございます」」
サーナは目をキラキラさせながら、カトリーナの手元を見つめている。
アリアはそんな二人の様子をしばらくみていたが、ふと思いつくと立ち上がった。
「アリアちゃん?」
カトリーナが不思議そうに顔を上げた。
「ちょっと待ってて」
アリアはそう言うと、カウンターの方へ向かった。
アリアが席に戻ってくると、カトリーナがサーナの前にお皿を戻しているところだった。
サーナはきれいに切り分けられたステーキを嬉しそうに見つめ、「ありがとうございます」とカトリーナに再度お礼をいう。
アリアはサーナに、先ほどもらってきたお箸を「はいっ」と、差し出した。
サーナの目が輝く。
「ありがとうございます」
サーナはニッコリすると、箸を受け取ると、さっそく慣れた手つきでステーキを食べ出した。
「サーナちゃん、お箸は上手に使えるのね」
カトリーナはサーナをジッと見ながら呟くように言うと、アリアに視線を移した。
「アリアちゃん、よく気がついたわね」
「前に、近所のおばあちゃんがレストランで困ってたことがあったの。お箸がないと食べられないって」
「まあ」
カトリーナは「クスクス」と笑いだした。
「私、おばあちゃんじゃないです」
サーナは食事をする手を止めて、頬をふくらませた。
アリアもたまらず笑い出す。
「サーナちゃん。今度ゆっくり、ナイフとフォークの練習をいたしましょうね」
カトリーナは優しい声でサーナに言った。
サーナは少し考えるように目をキョロキョロさせていたが、カトリーナの方を向いて、
「よろしくお願いします」
と、ぺこりと頭を下げた。




