ロジーナ、本部へ行く
登場人物紹介(追加)
コーネリア・・・師範魔術師。魔術師協会事務局勤務。ロジーナの友達。
ロジーナは久しぶりに魔術師協会本部に来ていた。
入門したアリアを、正式に見習い魔術師として登録するためだ。
登録を行うのには弟子を連れてくる必要はない。
アリアには「ちょっと出かけてくる」とだけ言って、アリアに課題を出してきた。アリアには内緒なのだ。
ロジーナは手続きを済ませ、登録証書と見習い用ピンバッジを受け取ると、出口へと向かった。
「あれぇ~。もしかしてロジーナちゃん?」
ロジーナは聞き覚えのある声に振り向いた。
金の巻き毛の女性が立っていた。コーネリアだ。
「あ、やっぱりそうだぁ~。おひさぁ~」
コーネリアはロジーナに手を振り、両腕をあげながら駆けよってきた。
ロジーナも反射的に両腕をあげる。
二人の両手が合わさり、パンッと軽い音を響かせる。
「なつかしぃ~」
二人は目を合わせクスクスと笑いだす。
コーネリアに会うのはかなり久しぶりだ。
ちょっと大人っぽくなったが、人懐っこい笑顔は昔のままだった。
「今日はどうしたのぉ?」
「うん。ちょっとね」
ロジーナはアリアの登録証をコーネリアにみせる。
「もしかしてぇ~」
「うん。お弟子とることになったの」
「ほんとにぃ!!」
コーネリアは満面の笑みを浮かべる。
「なんか似合わないでしょ」
「そんなことないよぉ~。遅いくらいだよぉ~」
コーネリアの言葉にロジーナは「うーん」と首をかしげた。
「ロジーナちゃんの実力なら、お弟子さんの10人や20人いてもおかしくないよぉ~」
「え、無理無理。一人でも手一杯」
ロジーナは手をナイナイしながら言った。
「そうかなぁ~」
コーネリアはニヤニヤと小首をかしげる。
二人はしばらくそこで立ち話をしていた。
積もる話が山ほどあった。
「ロジーナちゃん。用事がなかったらこの後お茶しない~?」
「そうねぇ」
ロジーナは視線を落とし考えた。
ロジーナにはこの後に用事はなかった。別に早く帰る必要もなっかた。このままコーネリアとおしゃべりしていたい気もした。
ふと、アリアの顔が浮かんだ。アリアに今日の外出の目的を伝えてはいない。だからアリアは登録証を待っているわけでない。別に早く帰る必要はない。必要はないが、登録証を見せればアリアが喜ぶのは判っていた。アリアはきっと大きな目をキラキラさせながら大喜びするだろう。
「ごめん。今日はやめとくね」
「そっかぁ~。お弟子さんが待ってるもんねぇ~」
コーネリアはニヤリとする。
「うん」
ロジーナはこくりと頷く。
「今度絶対お茶しようねぇ~」
コーネリアはニッコリと小首を傾げながら言った。
「うん。次は絶対ね」
「私ここの事務局で働いてるからさぁ~。今度来るときは連絡してねぇ~。絶対よぉ~」
ロジーナはコーネリアと約束すると、本部を後にした。
ロジーナが帰宅すると、アリアは一生懸命に課題に取り組んでいるところだった。
「どう?イメージつかめた?」
ロジーナが覗き込む。
「あ、お師匠様。お帰りなさいませ」
アリアは慌てて立ち上がった。
「はい。お土産」
ロジーナは登録証を差し出した。
アリアは登録証を受け取ると、不思議そうに眺める。
「えっ。これって、これって、これって、もしかして」
「そうよ。見習い魔術師登録証書」
アリアの顔がみるみる輝きだす。登録証を胸に抱きしめると、ぴょんぴょんとジャンプをはじめた。
ピンバッチをつけてやろうとしていたロジーナは、思わずのけぞる。
「ちょっとぉ。じっとしなさい。危ないでしょ」
アリアはピタッと動きを止めた。
ロジーナはアリアの襟に見習いピンバッチをつけてやる。
「はい。動いてもいいわよ」
アリアは襟を引っ張ってピンバッチを確認すると、にっこりと笑った。