アリア、サーナと同室になる
アリアとサーナは同室になった。
二人は大喜びで連れ立って、指定された部屋に入る。
部屋には二段ベッドと、それぞれの机が並んでいた。
これからの数日間、二人はここに滞在することになるのだ。
「アリアちゃん。私、下のベッドでもいいですか?」
「うん。じゃ、私は上ね」
アリアは早速、二段ベッドの上に登ってみた。
初めての二段ベッドにアリアは興奮していた。
天井がすぐ近くにある。
確認するかのように手を伸ばして天井を触ってみる。
そして、今度はベッドの柵に手をついて、逆さになって下の段を覗いた。
「サーナちゃ~ん」
アリアは赤い髪を揺らしながら、声をかける。
何もかも新鮮だった。
サーナはアリアに軽く手を振ると、荷ほどきを続行する。
大きな袋からピンクの枕がでてきた。
「サーナちゃん。マクラ持ってきたの?」
アリアは逆さになったまま尋ねる。
「うん。私、マクラが違うと眠れないのです」
サーナはそう言いながら枕を置くと、今度はもう一つの袋を開けた。
中からゲージが出てくる。
「ミャー」
サーナがゲージの扉を開けると、中から茶色いぶち猫が出てきた。
「ネコちゃん」
アリアはバッと身を起こすと、すぐにベッドから降りた。
「この子はミーアです」
サーナは降りてきたアリアに猫を渡した。
「かわいいっ」
アリアが猫をなでなですると、猫は目を細めて喉をゴロゴロならした。
「でも、ペットを連れてきてもいいの?」
「ミーアはペットじゃないです。お友達です」
サーナはニコニコして、アリアの抱いているミーアを撫でた。
「どこにもネコさんを連れてきちゃダメって書いてなかったです」
そう言って、ふんわりと微笑む。
「そうだけど……」
アリアは視線を落とした。
確かに、事前に配られた注意事項にはそう言った記載はなかったが、本当に大丈夫なのだろうか。
「ホントは、プラムかシンを連れてきたかったんです。だけど、お師さんが、プラムは大きすぎるし、シンはみんなが怖がっちゃうからダメ、って言うんです。だからミーアにしたんです」
サーナはそう言って、さっと手を広げた。
ミーアはそれに応えるかのようにアリアの腕からサーナへ飛び移った。
「でも……」
アリアは眉間に皺をよせる。
「もしかして、アリアちゃんはネコさん苦手です? 」
「ううん。大好き」
「良かったです」
サーナはほっとしたように微笑む。
「ミーアはこう見えて、とっても狩りが上手なのです」
誇らしげに言った。
「ミャー」
ミーアは一声鳴くと床に飛び降り、ポンと窓に飛び乗った。
そのまま少し空いた窓の隙間から外へ出て行ってしまった。
カーンカーンカーン
廊下からベルの音が聞こえてきた。
「あ、集合の合図です。アリアちゃん。行きましょう」
サーナはベッドから出ると筆記用具を持ち、扉に手をかけた。
アリアはチラリと窓をみたが、「うん」と返事をすると、いそいで用意をして、後を追った。




