クレメンス、現場に到着する
クレメンスが現場に到着したとき、ロジーナは魔力を全解放していた。
ロジーナの視線の先には何かがいた。
強大な力を持った魔物だ。
魔物が発する凄まじい魔力と、それを抑えるロジーナの魔力で視界が歪む。
「アリアは無事だ」
クレメンスは辺りの様子を確認しながらいった。
瓦礫の中に飛び散った肉片らしきものも見えるが、生存者もいるようだ。
「良かった」
ロジーナが安堵の声を出す。
「しばらく持ちこたえられるか?」
クレメンスはロジーナの声にゆとりを感じてはいたが、念のために確認した。
「ええ。頼むわ」
「うむ」
クレメンスは崩れかけた壁の外にうずくまっている人物に歩みよった。
「お怪我はありませんか?」
意識的に落ち着いた静かな声で尋ねる。
「僕は大丈夫ですが、カールさんが……」
クレメンスは、視線をめぐらせようとしたジャックの視界を遮るために、少し身体の向きを変えた。
「私は師範魔術師クレメンスと申します。後のことは私どもにお任せ下さい」
クレメンスがそう言ったとき、すぐ後ろに知っている魔力を感じた。
「おいらにも分け前くっださいなぁ~」
背後に現れたのは、ヨレヨレのローブをまとった薄汚い格好の男――ニコラスだ。
ジャックの目が驚きで大きく見開く。
クレメンスは心の中で大きく舌打ちをした。
心身に大きなストレスを抱えたジャックをこれ以上混乱させてはやっかいだ。
「ニコ。少し黙ってろ」
クレメンスは振り向かずに鋭い口調で注意する。
「叱られちゃった。てへっ」
その緊張感のない声に、ジャックの表情が少し和らいだように見えた。
クレメンスはホッと息をつく。
「これから魔術師協会へ転送いたします。経緯の説明をお願いできますか?」
ジャックは真剣な眼差しでしっかりうなずいた。
クレメンスも応えるようにうなずくと、術を練りはじめた。




