アリア、戻ってくる
約半年後、アリアは伯母夫妻を伴って館に現れた。
アリアは伯母夫妻を説得したのだ。
出迎えたロジーナに、伯母夫妻は「アリアの事をくれぐれもよろしくお願いします」と何度も何度も頭を下げた。
アリアは正式にロジーナの元に入門することになった。
「アリア。ずいぶん遅かったわね。待ちくたびれちゃったわよ」
伯母夫妻を見送ったあと、ロジーナは大きく伸びをしながら言った。
「待っていてくださったんですか!!」
「当たり前でしょ。この世界、そんなに簡単に抜けられないもの」
「お師匠様」
アリアは瞳を潤ませる。
「ちょっとちょっと。泣くのは止めてちょうだい。そういう辛気臭いのはキライなの」
ロジーナはアリアに向かってシッシと手を振る。
「さっさと準備してきなさい。一からやり直しだからね」
「はい!!」
アリアは部屋に行きかけて立ち止る。
「あのぉ。お師匠様。封印を解いてください」
くるりとロジーナの方に向きなおし、アリアは言った。
「封印?」
ロジーナは首をかしげる。
「私の魔力、封印したって……こうやって……」
アリアは思い出してもらおうと、人差指と中指で自分の額を何度かつついた。
ロジーナはしばらく視線を上にして考えているようだった。
「あぁ~、あれ。はいはいはい」
ロジーナは頷きながらアリアを見る。
アリアは大きくウンウンと頷く。
「あれは嘘よ。ただの冗談」
口をポカンと開けるアリアに、ロジーナはクスクスと笑いだした。
「いくらこの私でも、あんな簡単に他人の能力を封印するなんてできないわよ」
「でも……」
アリアには納得できなかった。
家に帰ってから魔術を使おうとしたのだ。何度やっても魔力を発動させることができなかった。
「あんたって暗示にかかりやすい子なのね」
アリアの様子を見ながら、ロジーナはぼそりと言った。
「信用できないなら、やってみればいいわ」
アリアは目を瞑り、以前教えられた通りに魔力をイメージする。身体中の全ての力が一点に集まり、凝縮されるイメージ。
ふっと魔力を感じた。
「あ……」
目を開けると、両手の中に小さな魔力の塊があった。
「アリア。覚えておきなさい。魔力を使うだけが魔術じゃないの。時にはハッタリも使うのよ」
ロジーナはそう言うとニヤリと笑った。