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ロジーナ弟子をとる  作者: 岸野果絵
初級魔術師編
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ロジーナ、怒鳴りそうになる

 アリアは呪文を唱えながら魔力を練っていた。

ロジーナはその工程をじっと見つめている。


アリアの前に小さな風の渦が現れた。

アリアは上手くできたとでも言いたげな表情でニンマリとする。

ロジーナは腕を組んだまま、ゆっくりと首を左右に振った。

アリアは不思議そうに首をかしげる。


「全然違うわ」

ロジーナは静かに言うと、ルーカスに視線を移す。

アリアもつられてルーカスの方を見る。

ルーカスの目の前には小さな竜巻が浮かんでいた。

アリアは口をへの字に曲げた。


「アリア、もう一度やってみなさい」

アリアはうなずくと、再び神経を集中させる。

呪文を唱えながら魔力を練り、動かし始める。


「そこが違う」

ロジーナが静かに言った。

アリアの動きが止まる。


「アリア。もう一度やるから、よく見ていなさい」

ロジーナはそういうと、ゆっくりと呪文を唱え始める。

アリアも一緒に呪文を唱え出す。


一瞬ロジーナの眉間がピクリと動いた。

アリアの動きに気がついたルーカスは、二三歩移動し、ロジーナとアリアの両方が視界に入る位置につく。

ロジーナはそのまま術を続けた。

アリアも一緒になって術を行う。


二人の術が完成した。

ロジーナの前には竜巻、アリアの前には風の渦が浮いていた。


「アリア、ちゃんと見ていた?」

ロジーナは穏やかな声で尋ねた。

アリアはウンウンと頷いた。

「そう。じゃあ、やってみなさい」


アリアは呪文を唱え出した。

「違う!」

ロジーナがきつい声で言った。

アリアはビクッとし、術を中断させた。


「私はそんな風にやってない」

ロジーナはアリアの顔を見据えながら、低い声で言った。

アリアの口がへの字に歪む。

私は言われた通りにやっています、とでも言いたげな表情だ。


ロジーナの頭にカーッと血がのぼった。

アリアは全然ロジーナのいう事を聞いていない。

先ほどから、何度も「見なさい」といっているが、一向に見ようとしない。

やっりたい気持ちはわからなくもない。

だが、今はきちんと見てほしいのだ。

アリアの今の能力なら、見ればわかるはずなのだ。

それなのに、アリアはロジーナの指示を聞き入れようとはしない。

近頃のアリアはちょっといい気になっている。

生意気だ。


「ロジーナ先生。もう一度見せていただけませんか?」

ルーカスの声に、ロジーナははっと我に返った。


危なかった。

もう少しで感情的に怒鳴り散らすところだった。


「わかったわ。もう一度ゆっくりやるわね」

ロジーナは表情をゆるめ、穏やかに言った。

「よろしくお願いします」

ルーカスは頭を下げた。


ロジーナは再びゆっくりと呪文を唱え始める。

視界の端で動き出すアリアがみえた。

ロジーナは心の中でため息をついた。


「アリアさん」

ルーカスがアリアの両手首を抑えた。

アリアは目を丸くする。


「先生の動きを見てください」

ルーカスはアリアの目をじっと見ながら言った。

アリアは怪訝な顔をする。

「ほら。あの動き。よく見てください」

ルーカスはロジーナを指さす。


ロジーナはアリアの視線を感じた。

もう一度、すこしオーバーに魔力を動かす。


「ほら、ね。わかりますか?」

アリアはロジーナの動きを見つめている。

ルーカスはほっとしたように、アリアから離れた。


「アリア、もう一度やるわよ」

ロジーナの言葉にアリアは「はい」と力強くうなづくと、今度は目を皿のようにして、ロジーナを見ていた。


「アリアやってみなさい」

アリアは頷くと、集中し、慎重に魔力を操作する。


術が完成した。

アリアの前には、まだ少々頼りなげではあったが、小さな竜巻が浮かんでいた。



 訓練を終え、ロジーナは修練場の結界の外にでた。

アリアは自主練習をするようだ。


「ルーカス君、ありがとね。助かったわ」

ロジーナは後に続いて外にでたルーカスに小声で言った。

「いえ」

ルーカスは口元に微笑みを浮かべると、ロジーナに軽く会釈した。

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