アリア、帰省から戻る
帰宅したアリアは窓の外を見るや否や、自室に駆け込みむと、ベッドの下を覗き込んだ。
「ちょっと、アリア。荷物どうすんのよ」
ロジーナが部屋のドアをドンドン叩きながら怒鳴った。
「いま行きますぅ」
アリアはベッドの下に右腕を突っ込み、奥の箱をとろうと必死だった。
「開けるわよ」
ロジーナが部屋のドアをいきおいよく開けた。
アリアはちょうど目的の箱をベッドの下から出したところだった。
部屋の入口からアリアの大きなカバンが飛んできた。
ドサッ
カバンはベッドの上に落ちた。
アリアは思わずビクッと身をすくめる。
バタン
ロジーナが大きな音をたてて、部屋のドアを閉めた。
アリアは再度身をすくめ、動きを止めた。
ロジーナの足音が遠のいて行った。
アリアはペロリと舌を出すと、先ほどの箱のふたを開けた。
中にはピンク色のスノーブーツが入っていた。
アリアはニコニコしながらそれを取り出し、部屋を飛び出した。
アリアはスノーブーツをはくと裏庭にでた。
裏庭はほぼ新雪状態だった。
アリアは新雪の中に突進していく。
足がズボズボと雪の中に埋まる。
アリアはキャッキャッと楽しそうに声をたて、夢中になって裏庭を歩き回った。
かがんで両手で雪をすくい取ってみる。
雪がさらさらとアリアの手からこぼれ落ちた。
思いっきり両手で舞い上げる。
パウダースノウがキラキラと輝きながら舞い落ちてくる。
アリアの生まれ育った街はほとんど雪が降らない。
降っても積もることはほとんどなかったし、ベチャベチャとした雪だった。
アリアはこんなに軽いサラサラした雪を見るのは初めてだった。
ボフッ
突然アリアの背中に何かが当たった。
振り向いたアリアに向かって、雪玉が飛んでくる。
ボフッ
今度は肩にあたった。
アリアは雪玉の飛んできた方向を見ようとする。
ボフボフボフッ
続けざまに雪玉がアリアにヒットした。
アリアは眉間にしわを寄せ、じっくりと向こうを見据えた。
そこには、周りに複数の雪玉を浮かべたロジーナが不敵な笑みを浮かべて浮いていた。
アリアは雪玉を作ろうと雪をすくい、両手でぎゅっと握る。
手を開くと雪の塊がサラサラと崩れ落ちる。
「むぅ」
アリアは口をへの字に曲げた。
ロジーナはアリアの様子を見ながらクスクスと笑い、雪玉を連射する。
ボフボフボフボフボフボフッ
雪玉がアリアの身体のあちこちにぶつかる。
「お師匠様ぁ~。やめてくださぁぁい」
アリアはたまらず叫んだ。
「私に荷物を運ばせた罰よ」
ロジーナはそう言いながらアリアのすぐそばに来ると、アリアをつき飛ばした。
バフッ
アリアが新雪の中に仰向けに倒れ込む。
パウダースノウが盛大に舞い上がった。
アリアは目を輝かせながら立ち上がると、今度は自ら新雪の中に倒れ込む。
バフッ
雪がキラキラと輝かながら舞った。
「お師匠様。見てください」
アリアは立ち上がると、満面の笑みを浮かべながら、再び倒れ込んだ。
「まったくもう」
ロジーナはそう言いながらも、ニコニコとしながらアリアを眺めていた。




