表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ロジーナ弟子をとる  作者: 岸野果絵
初級魔術師編
57/100

ロジーナ、居眠りする

 今年も無事に乗り越えた。


ロジーナは出勤するコーネリアを見送ると、ソファーに寝転がった。

明日には帰省しているアリアを迎えに行かなければならない。

ゆっくり休めるのは今日だけだった。


 ここ最近の温泉ブームで、静かだった村は観光客が訪れる温泉街となっていた。

特に年末年始は、のんびりと温泉で過ごそうという人々で賑わう。

小さな村は、村人よりも多い観光客の応対で大わらわになる。

人付き合いが苦手なロジーナだったが、素朴な村人たちとは良好な関係を築いていたので、この繁盛期には裏方として、あれやこれやと協力していた。

年越しの準備、村や神殿の手伝い、さらに大晦日の夜から元旦にかけての初日の出ツアーの付き添いなど、ロジーナにとって年末年始は一年で一番忙しい時期だった。

人並み以上の体力をもつロジーナだったが、三が日を終えるころには、疲れ果て、立っているのすら億劫になっていた。



 香ばしいにおいに、ロジーナの鼻が反応した。

お腹がギュルルと鳴る。

ロジーナはゆっくりと目を開けると、ハッとして起き上がった。

毛布がパラリと床に落ちる。

時計はすでに昼時を示していた。

ロジーナは慌てて立ち上がると、台所へと向かった。


 台所ではクレメンスが昼食の支度をしていた。

「ごめんなさい。私が当番だったのに……」

いつもはアリアとルーカスが交代で食事の支度をしていたが、アリアが帰省している間は、ロジーナがアリアの代わりに食事の支度をすることになっていたのだ。

「疲れているんだろ? 気にすることはない。それに私は食べたいものがあるのだ」

クレメンスはそう言いながら汁物の味見をし、満足げにうなずいた。

「手伝うわ」

ロジーナはエプロンを手にしながら言った。

「ならばルーカスたちを呼んできてくれ。修練場にいるはずだ」

クレメンスが盛り付けをしながら言った。

「うん。わかったわ」

ロジーナはエプロンをおくと、中庭にある修練場へと向かった。



 ロジーナは中庭に出た。

修練場の前でルーカスと立ち話をしているコーネリアの姿が見えた。

「あ。ロジーナちゃん。おはよ~」

コーネリアは手を振ると「うふふ」といたずらっぽく笑った。

居眠りをしていたのを見られた、と気がついたロジーナは軽く眉間にしわを寄せた。


「コーネリア。ずいぶん早いのね」

ロジーナは低い声で言った。

「うん。今日はおじちゃん達の訓示を聞いてあげるだけのお仕事だから~」

コーネリアは小首をかしげて「うふふ」と笑った。


ロジーナは何の気なしに視線を動かす。

ニコニコしながら立っているルーカスに気がついた。

「そうだ。ルーカス君。お昼ごはんできたわよ」

「あ、はい。いつもすみません」

ルーカスは一礼する。

「今日はクレメンス先生の手料理だもんねぇ。楽しみ~」

コーネリアはニコニコしながら胸の前で指を組む。

「え、師匠が?」

ルーカスは驚いた顔でコーネリアを見て、すぐにロジーナに視線を移す。

「そうよねぇ。ロジーナちゃん」

コーネリアはロジーナにニッコリと笑いかける。

ロジーナは顔をひきつらせ、咳払いをする。

「クレメンスが食べたいものがあるって言うから代わってあげたの」

ロジーナは斜め下を見ながら、少し強い調子で言った。


「そういう事にしとくね~」

コーネリアはクスクスと笑いながら、食堂へ向かって歩き出した。

ルーカスは不思議そうに首をひねながら後に続いた。


「しておくも何も、ほんとのことなんだから」

ロジーナはブツブツ文句を言いながら食堂へと向かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ