クレメンス、迎えに行く
東の空が白みはじめたころ、クレメンスは魔術師協会本部の一室の前に立っていた。
扉を開けると、酒のにおいが一気に押し寄せてきた。
クレメンスは室内を見回した。
室内には、男たちが思い思いの格好で転がっていた。
酒瓶を抱えて床に寝転んでいる者、テーブルの上に突っ伏している者、仲良く肩を組んで何やら言っている者、大いびきをかいている者……。
その中で、ルーカスだけは何事もなかったように座っていた。
「師匠」
ルーカスは立ち上がろうとしたが、ルーカスの肩にはカルロスが寄りかかって寝ているので動けないようだった。
「ほぉ、お前の一人勝ちか」
クレメンスは楽しそうにニヤリと笑った。
「いえ。とんでもないです。僕も足元がちょっと……」
ルーカスは手を左右にフリフリしながら、いつもの口調でこたえる。
顔色もいつも通りだ。
「フフフ。カルロスを潰すとは大したもんだな」
クレメンスはカルロスの襟首を掴むと、ルーカスから引きはがす。
「おらぁ~まら呑めるろぉ~」
カルロスは呂律のまわってない舌でムニャムニャ寝言をいう。
「仕方のないヤツだな……」
クレメンスはカルロスを床に転がす。
「もっとのめぇ~」
カルロスは寝返りをうつと、いびきをかきだした。
「さて、ルーカス。帰るとするか」
「え、でも、みなさんが」
ルーカスは立ち上がりながら辺りを見渡す。
ルーカスの足元はしっかりしていた。
「酔いが醒めれば自力で帰るだろう」
「でも……」
「心配無用だ。いつものことだ」
クレメンスはそう言いながら術を完成させると、ルーカスを連れて帰宅した。




