表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ロジーナ弟子をとる  作者: 岸野果絵
初級魔術師編
51/100

ルーカス、拉致られる

 ロジーナはクレメンスとルーカスを見送ると、ふと料理のテーブルの方を見る。

アリアが取り皿をテーブルの上に置き、誰かと話している姿が見えた。

相手は大柄の男――カルロスだ。

ロジーナの位置からはアリアの表情は見えなかったが、カルロスはいかにも楽しそうにニヤニヤしている。


なぜだか非常に嫌な予感がする。

ロジーナはアリアの方に向かって歩き出した。


「カルロスのばかやろぉ~」

アリアは真っ赤な顔で右手を振り上げる。

ロジーナは背後からアリアの腕を掴んだ。

「アリアっ、カルロス先生になんて事言うの!!」

ロジーナが一喝すると、アリアは口をへの字に曲げた。


「や~い。怒られてやんの~」

カルロスが両手を顔の横で「ばぁ」と広げながらニヤニヤと笑う。

アリアの瞳がみるみる潤んできた。

ロジーナはキッとカルロスを睨みつける。


「おぉ~こわ」

カルロスはおどけた表情で、わざとらしくブルブル震える振りをする。

ロジーナは大きなため息をつくと口を開きかけた。

「相変わらず、弟子の躾も満足にできないんだな」

カルロスの横から聞こえてきたハンスの嫌味な声にロジーナの眉がピクリと動く。

「うっさいわね」

ロジーナは低い声でつぶやくと、薄目でハンス見る。

「お、ロジーナがマジギレした」

カルロスの声にロジーナは再びカルロスを睨みつける。


「ずいぶんと楽しそうだな」

振り向くと、クレメンスがルーカスを引き連れて立っていた。

「師匠」

カルロスとハンスは居住まいを正す。


「どうだった?」

ロジーナはルーカスをチラリと見ながら、クレメンスに尋ねた。

「大丈夫だ。エルナンドもこれ以上ちょっかいを出してくるほど愚かではない」

二人の会話を聞いていたカルロスの瞳がキラリと光った。


「おい、ルーカス。おまえ、エルナンド先生んとこにいたのか?」

カルロスはルーカスのすぐそばに移動すると囁いた。

「あ。はい」

ルーカスは少し驚いた様子でうなずく。

「なぁなぁ、あのジジイ、がめついって噂は本当なのか?」

「え?」

「おまえもぼったくられたクチか?」

ルーカスは困惑の表情を浮かべる。

「いいじゃねぇか。俺とおまえの仲なんだからよ。ちょっとここに囁いてくれればいいんだ」

カルロスは耳の後ろに手をあてて、ルーカスの口元に近づける。

「あの古狸にいくらむしり取られた?」

「いや……それは……」

ルーカスは一歩、二歩と後退りする。


「おっと、こいつはすまねぇ。俺が悪かった」

カルロスはルーカスから離れると、自分の後頭部をポンとたたく。

ルーカスはホッとした表情になる。

「こんなとこでする話じゃねぇよな」

カルロスは「ガハハ」と笑った。

ルーカスは気を緩めた。


ガシッ


カルロスがルーカスの肩に腕を回し、ガッチリと掴む。

「向こうでじっくり聴いてやろうじゃねぇか」

ルーカスの耳元で囁くように言う。

「え……。いや……それは、ちょっと……」

カルロスは、顔を引きつらせるルーカスを強引に引きずりながら歩き出した。

ハンスはクレメンスに一礼すると、慌てた様子でカルロスの後を追った。


「カルロスはルーカスのことがずいぶんと気に入ったようだな」

クレメンスは目を細めながら「フフフ」と楽しそうに笑った。

「あの様子じゃ、今日中には帰れそうもないわね」

ロジーナもクスクスと笑った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ