ルーカス、アリアの訓練に参加する
中庭の結界の前にロジーナとアリアはいた。
ロジーナは大きく伸びをし、軽く腕を回す。
アリアも真似をする。
「ロジーナ先生、アリアさん」
ロジーナが振り向くとルーカスが立っていた。
「訓練を見学させていただけませんか?」
ルーカスの言葉にロジーナは嬉しくなった。
さすがはクレメンスが見込んだだけのことはある。
後輩の見学をしたいと申し出る者はあまりいない。
ほとんどの者は自分ができるようになってしまえば、それで終わりだと思っている。
でも、それは大きな間違いだ。
上っ面だけできるようになっても、本当に理解したとは言えない。
できるようになってからが勝負なのだ。
できるようになって、はじめて見えてくるモノがある。
ルーカスにはそのことがちゃんと分かっているのだ。
「どうせなら見学じゃなくて参加したら?」
「え?いいんですか?」
「今は防御魔法の訓練をしてるから、お相手してくれると私も楽なのよ」
ロジーナはそういうとアリアの方をみる。
「ねぇ、アリアもその方がいいわよね」
アリアはコクコクと頷く。
「私の集中砲火あびなくてすむもんねぇ、アリア」
アリアの笑顔が固まる。
「あんたって本当にわかりやすい子ね」
ロジーナはくすっと笑うと、ルーカスの方を見る。
「それに……」
ロジーナはルーカスに教えるように視線を動かす。
ルーカスはロジーナの視線の先を見る。
視線の先にはにクレメンスが立っていた。
「師匠もそうしなさいってね」
ロジーナはニッコリ笑う。
「ありがとうございます。よろしくお願いします」
ルーカスは深々とお辞儀をした。
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ロジーナはアリアとルーカスを残し、修練場の結界の外にでると、中庭にいるクレメンスのそばに行った。
「ルーカスの様子はどうだ?」
「のみ込みが早いわ。アリアへの指導を見ながら、どんどん自力で修正かけてっちゃうの」
クレメンスは「フフフ」と満足そうに笑った。
「上魔が無理なんて考えられないわ。前の師匠はどこを見てたのかしら」
ロジーナは少し語気を強めて言った。
「……いろんなのがいるからな……」
クレメンスは珍しく歯切れの悪いこたえ方をした。
ロジーナはクレメンスの顔を窺うようにみる。
少し視線を落としたクレメンスの瞳の奥に複雑な色が宿っている。
クレメンスは自分よりも、もっともどかしい思いでいるんだ。
ロジーナはそう感じた。
クレメンスでもどうにもできないことがあるんだ。
「でも、良かったわ」
クレメンスは不思議そうにロジーナの顔を見る。
「だって、ルーカス君。もう一度戻ってくることができたんですもの」
ロジーナはニッコリと笑いかける。
クレメンスは「フッ」と表情を緩める。
「そうだな」
そう言うと、クレメンスは微笑んだ。




