アリア、むくれる
カルロスの元から帰宅すると、アリアは廊下にへなへなと座り込んだ。
「アリア、大丈夫?」
ロジーナが迎えに行ったとき、アリアは半ば放心状態で、話しかけても反応が薄かった。
一目でよっぽど絞られたということがわかるような憔悴状態だった。
「お師匠様。鬼です。鬼なんです」
アリアは座り込んだままうつろな目をしている。
「あの人は鬼ですぅぅ」
蚊のなくような声でアリアはつぶやいた。
「ぶっ」
ロジーナが振り向くと、壁に片手をつき、こちらに背を向けているクレメンスがいた。
肩が小刻みに揺れている。
「ひどいですぅ。男の人は嫌いですぅ」
アリアの顔がクシャクシャになる。
ロジーナはクレメンスを睨みつける。
クレメンスは相変わらず肩を震わせながら、「すまない」とでもいいたげに片手をあげる。
ロジーナはため息をついた。
「うぇ……ふぇ……」
アリアの顔はクシャクシャのままだ。
「そうよねぇ、アリア。ほんと、男の人ってひどいよねぇ」
ロジーナの言葉に、アリアはウンウンと頷く。
「あんなおじちゃん放っておいて、お部屋に行きましょうね」
アリアはロジーナに促されるまま立ち上がる。
「お部屋でゆっくりお話ししましょうね」
アリアはコクコク頷きながら、トボトボと歩き出した。
その後、ロジーナは長時間にわたり、アリアの愚痴につき合う羽目となった。
翌週、ロジーナはアリアが行きたがらないのではないかと心配していた。
朝食の後片付けを終えたアリアは勇ましい顔つきでロジーナの元にやってきた。
「アリア大丈夫?私がずっとついていようか?」
「大丈夫です」
アリアはきっぱりと言った。
「あいつ、いつか退治してやるっ」
アリアは拳をぎゅっと握り、キリリと言い放った。
ロジーナはホッとした。
アリアの負けん気の強さは本物だったらしい。
「そうよ。やっつけちゃえ」
ロジーナは拳をあげる。
「はいっ」
アリアは勇ましく拳をつきあげた。




