ロジーナ、アリアを説得する
アリアは眉間にしわを寄せうつむいた。
「お師匠様じゃダメなんですか?」
「私は火の術は得意ではないの。カルロス先生の火の術はすごいわよ」
アリアはうつむいたままだ。
「そうね、きっと協会では一番じゃないかしら。火の術に限って言えば、私はもちろん、クレメンスだって敵わない」
アリアは口をへの字に曲げて唸っている。
「カルロス先生に教われるなんて、すっごくラッキーなことなのよ」
「でも、お師匠様がいいです」
アリアは顔をあげ、きっぱりと言った。
「だから、私じゃ限界があるの。これはあんたのためなのよ」
「でもでも、私はお師匠様に習いたいんです!!」
アリアは拳を握って叫ぶと、ロジーナを見据え、口をへの字に曲げた。
ロジーナは盛大なため息をついた。
こうなったアリアはテコでも動かない。
座り込みをしたときや、ヘレンとケンカしたときと同じ状態だ。
カルロスの元に強引に引きずって行くことは簡単だ。
しかし、それでは意味がない。
教える側がいくら教えても、習う方がその気にならなければ、単なる時間の無駄だ。
水飲み場に連れて行くことはできるが、その水を飲むか飲まないかは本人次第なのだ。
アリアが固く心を閉ざした状態では、カルロスの元に連れて行っても、徒労に終わる。
カルロスにも失礼だ。
どうにかして、アリアをやる気にさせなければならない。
「ねぇ、アリア。あんたは一流の魔術師になりたくないの?」
「なりたいです」
「なりたいのに、なんで一流になる近道を嫌がるの?」
「……」
アリアは無言でうつむく。
「私のこと、信用してないの?」
「そんなことないです。お師匠様のおっしゃることは絶対です」
「なら、なんで拒否するの?」
「……」
「一生懸命あんたのこと考えて、カルロス先生のところに頼みに行ったのよ?私の顔をつぶす気なの?」
「それは……」
アリアは顔をあげる。
「他の先生のところに行くのも、結構楽しいのよ。お友達もできるし」
「お師匠様も行ったんですか?」
アリアの眉間のしわが消える。
見つけた。
ここが糸口だ。
ロジーナはニッコリと笑った。
「そうよ。私もいろんな先生のところに教わりに行ったのよ」
「そうなんですか?」
「そうよ、だからあんたも行くのよ」
アリアはホッとしたような顔をした。
ロジーナはニヤリと笑う。
「行く気になった?」
「はい」
アリアはこくりと頷いた。
こうしてアリアは週に一度、カルロスの元に通うことになった。




