ロジーナ、頼みに行く
ロジーナはアリアのことを頼みに、カルロスの元を訪れた。
「かわいい妹弟子の頼みだ。喜んで引き受けようじゃないか」
カルロスは胸をドンと叩いた。
「ありがとうございます」
ロジーナは深々と頭を下げた。
「アリアってぇのは、目ん玉のでっかい娘だよな。ハンスんとこのとやりあった」
「そ、そうです。きちんと言い聞かせますから……」
カルロスの言葉にロジーナは慌てた。
「元気があっていいじゃないか」
カルロスは大きな口を開けて「ガハハ」と笑った。
ロジーナはほっと息をついた。
やはりカルロスに頼んで正解だった。
カルロスはさばさばした性格で面倒見も良い。
その上、かなり前向き思考だ。
「俺んとこはむさっ苦しい野郎ばかりだからな。あんまりおしとやかでも困る」
カルロスは腕を組みながら顎に手をやりニヤリとする。
「女の子かぁ。野郎ども、大喜びするぞ」
ロジーナの動きが止まる。
「おう。心配すんな。俺様が指一本触れさしゃぁしねぇよ」
カルロスはソファーに反り返り、「ガハハハハ」と大声でわらった。
「はぁ……」
ロジーナはひきつった笑みを浮かべた。
そういう心配はしていない。
それよりも、アリアがカルロスのようにガサツになってしまうのではないか。
ロジーナはそのことが心配だった。
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遡ること、数週間前。
クレメンスはカルロスの元を訪れていた。
カルロスが応接室に入ると、クレメンスは窓際に立ち、外を眺めていた。
「師匠。ご無沙汰しております」
カルロスは神妙な面持ちでお辞儀をする。
「元気そうだな」
クレメンスはゆっくりと振り向く。
「はい」
返事をしたカルロスにクレメンスは目でうなずく。
「そのうちに、ロジーナが弟子を連れてお前の元を訪れるだろう」
「ロジーナの弟子ですか?」
カルロスの問いに、クレメンスはうなずく。
「ロジーナの弟子、アリアには火の才がある」
カルロスが瞳の奥がキラリと光る。
「師匠がそうおっしゃるということは、かなり見込みがあるということですね」
クレメンスが「うむ」とうなずく。
カルロスの口元にニヤリと笑みが浮かんだ。
「それは楽しみですね。わかりました。喜んでお引き受けいたします」
「頼んだぞ」
「はい」
クレメンスは満足そうにうなずいた。
「それにしても師匠。相変わらずロジーナには甘いですね」
クレメンスはニヤニヤするカルロスに冷たい視線を送る。
「私にそのような軽口を叩くとは、ずいぶんと出世したものだな、カルロス」
カルロスの顔に緊張が走る。
クレメンスはふっと表情を緩めると「フフフ」と嗤った。
カルロスもいたずらっぽっくニヤリ笑う。
「さて。私は帰る。カルロス、くれぐれも頼んだぞ」
「お任せください」
目礼するカルロスに満足そうな笑みを残し、クレメンスは姿を消した。




