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ロジーナ弟子をとる  作者: 岸野果絵
入門編
4/100

アリア、弟子になる

 アリアはよく働いた。

 朝は誰よりも早く起きて朝食の準備をし、ロジーナたちが食事をとっている間に、門の外を掃き清める。朝食をかっこむようにすませると、後片付けをし、掃除や洗濯をする。昼食を用意して、片づけてから買い物に行き、夕飯やお風呂の支度をする。

 アリアは一日中、何かしら仕事を見つけては、くるくると動きまわった。


 アリアが来てから数日が過ぎた。

 ロジーナはアリアに魔術を教える素振りは一切なかった。それどころか、アリアの存在すら素知らぬふりをしていた。

 ロジーナは食事を終えると書斎に閉じこもってしまうか、ふらりと出かけてしまう。たまにアリアに話しかけることといえば、「それとって」や「これ仕舞っておいて」などの雑用を頼むくらいだった。

 アリアは完全に下女扱いをされていた。

 しかし、アリアはロジーナの冷たい仕打ちにもめげなかった。ロジーナが雑用を命じれば、二つ返事で嬉々としてしたがった。


 アリアにとって、ロジーナは子供のころからずっと憧れていた魔術師だった。

 もちろん、アリアだって魔術を教わりたいし、いつかはそれなりの魔術師になりたいとは思っている。しかし、今はこうしてロジーナのそばにいられるだけでも大満足だった。


 その日、めずらしくロジーナは居間のソファーに寝転んで本を読んでいた。

 アリアは拭き掃除をしながら、そんなロジーナの姿を、ときおりちらちら眺めていた。


「ちょっと出かけてくるわ。ああ、あんたはついて来なくていいから」

 ロジーナはふいに立ちあがり、読んでいた本を無造作にソファーに置くと出て行ってしまった。

 アリアはちょっぴり残念に思いながらも居間の掃除を続けた。


 一通り部屋の掃除を終えたアリアは、ソファーに置かれている本に気がついた。

 テーブルの上にでも移動しようと、本を手にとった。

 魔術書だった。


 ちょっとだけ……。置いてあったんだからいいわよね。

 アリアは自分にそう言い訳をして本を開いた。


 アリアは辿々しく格闘しながらも、魔術書にひきこまれていった。

 知らず知らずのうちに、時が流れていった。


「へぇぇ。字は読めるのね」

 突然背後からふってきたロジーナの声に、アリアはビクッとなる。

 本に夢中になっていたアリアは、ロジーナが帰ってきたことに気がつかなかったのだ。

 振り向くと、ロジーナは腕組みをしてアリアを見下ろしていた。


 許可なく勝手に本を読んでしまったのだ。怒られる。いや、追い出されるかもしれない。

 アリアはその場にすくんでいた。


「その本あげるわ。飽きちゃったし」

 ロジーナはそれだけ言うと部屋から出て行ってしまった。


 アリアは呆然としていた。


 怒られなかった。追い出されなかった。そうだ、あげるって。

 この本。この本、あげるって……。


「ありがとございますっ!!」

 アリアは魔術書を胸にギュッと抱きしめた。



 翌朝、食卓を片づけているアリアに向かってロジーナが言った。

「アリア。それが終わったら、昨日の本を持って書斎に来なさい」

 驚いたアリアが顔を上げると、ロジーナはドアノブに手をかけているところだった。

「そうだ。言っとくけど、教えるからには容赦はしないわよ」

 ロジーナは振り向きもせずそう言い残すと行ってしまった。

「頑張ります!!」

 アリアは目を輝かせながら叫んだ。

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