アリア、バテる
一行はルーカスを先頭に、サムエル、アリア、クレメンスの順で歩いていた。
はじめのうちはなだらかな傾斜だったが、だんだんと険しくなってきた。
整備されているとはいえ、山道だ。
ところどころに木の根や岩が突き出ていた。
アリアの息が上がってきた。
前を歩くサムエルとの距離が広がっていく。
どうしよう。
遅れてる。
アリアは焦って速度を速めようとむきになった。
と、つま先が何かに引っかかった。
「ひゃっ」
アリアの身体が前のめりになる。
ルーカスとサムエルが心配そうに振り向く。
アリアはなんとか踏みとどまった。
「少し休憩しましょうか」
アリアの様子にに気がついたルーカスの呼びかけにより、一行は休憩することになった。
アリアはよろよろと近くの岩の上に腰掛けた。
ふきだす汗をタオルでぬぐい、深呼吸して息を整えようとする。
「アリア。慌てなくていい。自分のペースで歩きなさい」
クレメンスはアリアのリュックにつけた水筒をとってやりながら言った。
「時間はたっぷりありますから、大丈夫ですよ」
ルーカスも気遣うように声をかける。
「この先もっときつくなりますし、足場も悪くなります。僕はこうやって水分補給したりしてのんびり待ってますから大丈夫ですよ」
ルーカスはそう言いながら、アリアの目の前で小さな袋を広げる。
中には小さな乾燥した赤い実が入っていた。
ルーカスの顔を見上げると、ルーカスはニコニコしながらうなずいた。
アリアは一粒とると、口に入れてみた。
程よく塩気のきいた甘みが口の中に広がる。
アリアはニッコリ笑うと、さらに数粒口に含んだ。
「では、行きましょうか」
一行は再び歩き始めた。
アリアは、今度は足元に注意しながら慎重に歩く。
しばらく行くと、ルーカスの言った通り、さらに急こう配の登り道が目の前に現れた。
見上げても終わりは見えないほどの長い登り道だ。
「え゛ー」
どこまでも続くような急な登り道に、アリアは思わず声をあげた。
果たして自分に登りきることができるのだろうか。
先頭のルーカスは軽い身のこなしでどんどん登って行く。
少し危なっかしい足取りのサムエルが続く。
とにかく行かなくちゃなんない。
アリアは意を決して歩き出そうとした。
と、後ろからクレメンスがアリアの肩に軽く触れた。
アリアの全身が魔力に包まれ、一瞬だけ軽く光った。
ふっと身体全体が軽くなった気がした。
アリアは驚いて振り向いた。
「ロジーナには内緒だ」
クレメンスはそういうと片目をつぶった。
「ありがとうございます」
アリアはニッコリ笑うと、意気揚々と歩きだした。
今度はアリアは息も上がることはなく、遅れることもなかった。
まるでスキップをするかのようにご機嫌に登り始めたアリアを眺めながら、クレメンスは「ふっ」と鼻で笑った。
「無邪気なもんだな」
素早く浮遊の術を練り、軽く握った左手の中に隠す。
「使うことにならねば良いがな……」
そうつぶやくと、慣れた足取りでアリアたちの後を追った。




