アリア、魔法を使う
「アリア」
アリアは突然名前を呼ばれてビクッと顔を上げた。
「魔物避けをかけなさい」
クレメンスにそう言われて、アリアはうつむいた。
自信がない。
ここのところずっと練習してきた。
失敗の頻度は減ってはいたが、なくなったわけではない。
それに、成功してときも、なんとなく術がかかりきっていない感じがあった。
成功しても、なんだかしっくりいかない。
おさまりが悪い感じがするのだ。
そんな未完成な状態の術を使ってもいいのだろうか。
「心配はいらない。私がサポートする」
アリアは不安な面持ちでクレメンスの顔を見上げる。
「大丈夫だ。安心して術を行いなさい」
クレメンスは促すようにうなずいた。
「はい」
アリアは返事をすると深呼吸した。
目を閉じて意識を集中させる。
呪文を唱えながら、慎重に魔力を練り上げる。
よし。
上手く行った。
でも、問題はここからだった。
いつもこの先で引っかかってしまう。
アリアはさらに慎重に魔力の操作をする。
と、クレメンスの魔力が流入してくるのを感じた。
クレメンスの魔力はまるでアリアを誘導するかのように動いていく。
アリアはそれに従い、魔力を操作する。
かかった。
上手く行った。
アリアは今までとは全然違う手ごたえを感じた。
「よくやった」
クレメンスがニッコリと笑いかける。
ルーカスやサムエルもニコニコしている。
やったぁ。
アリアは満面の笑みを浮かべた。




