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ロジーナ弟子をとる  作者: 岸野果絵
入門編
3/100

アリアVSロジーナ

 しとしとと雨が降りはじめた。

 クレメンスは腕を組んで窓のところに寄りかかっていた。

 先ほどからずっとクレメンスの視線は窓の外にそそがれている。


 今日も懲りずにアリアはやってきた。

 アリアが何度も呼びかけても、激しく門扉を叩いても、ロジーナは無視をきめ込んだ。


「お弟子にしてくださるまで、ここを動きません!!」

 アリアはそう叫ぶと、ついに座り込みをはじめた。


 すぐにあきらめて帰るだろう、そう思った。

 だが、その予想は大きく裏切られた。日が落ちてもアリアは帰らない。雨が降りはじめてもアリアは動かなかった。


「なんなのよ。言いたいことがあるなら言いなさいよ」

 沈黙に耐えきれなくなったロジーナは立ち上がりながら、クレメンスにむかって怒鳴った。

「何を怒っているのだ。私はただ外の景色を見ているだけだ」

 クレメンスは素知らぬ顔で言う。

 ロジーナはキッとクレメンスを睨むと、ドスドスと足音をさせて部屋を出て行った。


「ちょっと、いいかげん帰んなさいよ。こんな雨の中座り込みされても、目障りなだけなのよ」

 ロジーナはアリアを見下ろしながら言った。

「イヤです。お弟子にしてくださるまでは帰りません」

 アリアは口をへの字に曲げた。


「ちょっと、どきなさいよ」

 ロジーナはそう言いいながらアリアをついた。

 アリアの前髪からから雫が流れ落ちる。

「どきません」

 アリアは踏ん張った。


 ロジーナは舌打ちをすると、思いっきりアリアを押す。

「どきなさい」

「どきません」

 アリアは石のように動かない。

「どきなさい」

「どきません」

 そんなやり取りが数回続いた。


「あんたってほんと強情な子ね」

 ロジーナはとうとうアリアの腕をつかむと引っ張った。強引に移動させるつもりらしい。

 アリアは歯を食いしばり、顔を真っ赤にして踏ん張る。

「ちょっとぉ、なんて力なの」

 ロジーナは懸命に引っ張る。

 アリアも必死に抵抗する。

しばらくの間、攻防戦は続いた。


「ロジーナ。どうやらお前の負けのようだな」

 小一時間ほどたっただろうか。クレメンスの静かな声が響いた。

 ロジーナはフンっと鼻を鳴らすと、アリアの腕を離した。

 二人ともずぶ濡れだった。


「あんた、何でもするって言ったわよね」

 ロジーナは腰に手をあて、アリアを見下ろした。

「はいっ」

「じゃあ、下女ならいいわ。下女としてならおいてあげる」

 アリアの顔がみるみるパアッと明るくなる。

「勘違いしないでちょうだい。まだ弟子にするとは言ってないわよ。下女よ、下・女。見込みがなかったら追い出すからね」

 ロジーナはそう言い残すと、プイッと館の中へ消えて行った。

 アリアは祈るように両手を組み、目をキラキラさせながらロジーナの消えた先を見つめていた。


 こうしてアリアで館で暮らすことになった。

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