ロジーナの悩み
「ねぇクレメンス。あなたはどっちなの?私の味方?それともハンスの味方?」
クレメンスは表情を消し、前方をじっと見据えている。
「そういう質問は嫌いだ。そう顔に書いてあるわ」
ロジーナはクスクス笑いながら、クレメンスの頬をつつく。
「ほんとに冷たい人ね。でも、そんなところも好き」
ロジーナはクレメンスに寄りかかる。クレメンスはロジーナの方を見る。
「ねぇ。私が暴走したら絶対止めてね」
ロジーナは身体を起こすと、クレメンスに向きなおる。
「私、あなたに殺されるのなら構わない」
ふたりの視線が交わる。
ロジーナは、その強大な魔力ゆえに、いつも心の奥底に不安と恐怖を抱えていた。
感情の制御がきかなくなれば、魔力が暴走するに違いない。自分自身でも自分魔力の底を見極めることができないでいるのだ。
その上、日に日に魔力が強まっている感覚がある。今は制御できているが、そのうち制御でき無くなるかもしれない。
そんなことになったら……。そのことを考えると、恐怖で押しつぶされそうになる。
「わかった。その時は、どんな手段を使っても必ずお前を止めよう」
ロジーナはうなずくと寂しげに微笑む。
クレメンスは表情を和らげると、ロジーナの頭をなでた。
「心配はいらない。大丈夫だ」
ロジーナの頬を涙が伝う。クレメンスはロジーナの涙を指でぬぐってやる。
「その時が来ることはない。その前に必ず私が手を打つ」
そう言いながらロジーナを抱き寄せる。ロジーナはクレメンスの胸に顔をうずめた。




