アリア、やってくる
登場人物
ロジーナ・・・師範魔術師。強大な魔力の持ち主。専門は付与魔法
アリア・・・見習い魔術師。ロジーナの弟子。
クレメンス・・・師範魔術師。ロジーナの師匠で夫。専門は空間(結界・封印)魔法
「ほぉ、また来たようだ」
窓の外を眺めながらクレメンスが言った。
ロジーナも窓の外を見る。
赤毛の少女がこの館に向かってやってくる姿が見える。
「ほんと、やんなっちゃう」
ロジーナは吐き捨てるように言った。
少女の名はアリア。ロジーナの頭痛の種だ。
三日ほど前、アリアは館を訪れた。
「ロジーナ様。あなたのお弟子にしてください」
アリアは大きな目をキラキラと輝かせながら言った。
「お生憎様。弟子は取らない主義なの」
突然の申し出に驚きながらも、ロジーナは即答した。
「そんなぁぁ。お願いです。何でもしますから、お弟子にしてください」
「嫌」
ロジーナは取りすがるアリアを振りほどくと、玄関をぴしゃりと閉めた。
しかしアリアは諦めなかった。翌日も館にやってきた。
ロジーナはアリアの顔を見たとたん、玄関をぴしゃりと閉めた。
それでもアリアは諦めなかった。その次の日も、そのまた次の日もやってきた。
ロジーナはアリアが来るたびに門前払いをしている。それでもアリアは、ロジーナの冷たい仕打ちにもめげずに、毎日やってくるのだ。
「あの粘り強さ、なかなか見どころがあるのではないか?」
クレメンスは目を細めながら言った。
「じゃあクレメンスが弟子にすれば?慣れてるんだし」
ロジーナは皮肉たっぷりに言い放つ。
クレメンスはゆっくりとロジーナの方に向きなおる。
「断る」
クレメンスはロジーナに向かってきっぱりと言った。
「あの娘が選んだのはお前だ。受けるにしろ、断るにしろ、お前自身で始末をつけなさい」
クレメンスはそう言うと行ってしまった。
「なによ。こういう時だけ師匠面して……」
ロジーナはクレメンスの消えた方向に向かって、思いっきり「い゛ーっ」っとやった。