アリア、問題を起こす
アリアが他の受講者に傷を負わせた。コーネリアから知らせを受け、ロジーナは即座に本部へと飛んだ。
アリアはハンスの弟子のヘレンと口論の末、火の術で相手に火傷を負わせたらしい。幸い、ヘレンの火傷は水ぶくれにもならない軽傷だった。
「よくある些細なケンカなんだけどね~。一応ねぇ~」
コーネリアに説明を受けながら、ロジーナは一室に入った。
アリアが一人ぽつんと座っていた。ロジーナはその姿を見たとたん、カーッと頭に血が上った。
「アリア。あんた、なんでこんなことしたのよ」
ロジーナはアリアを見下ろす。
「……」
アリアは口を下を向いたままだ。
「今すぐ謝りなさい」
「私は悪くありません」
アリアは膝の上で手をギュッと握る。
「謝りなさい」
「謝りません」
アリアは首を左右に激しく振る。ロジーナはアリアの後頭部を押して、無理矢理お辞儀をさせようとする。が、アリアはものすごい力で抵抗する。
「ちょっと、なんて強情なの!!」
アリアは口をへの字に曲げて、目を潤ませている。
「ロジーナちゃん。今日はもう……。ハンス先生には私から上手く言っとくから……」
見かねたコーネリアが助け舟を出した。
「ありがと。そうしてもらえると助かる。後で必ず謝りに行かせるから」
「あんまりきつく叱らないであげてね」
ロジーナはコーネリアの言葉に甘え、本部を後にした。
ロジーナは帰宅すると、とりあえずアリアに食事をとらせた。お互い、少し時間をおいて頭を冷やす必要があった。
「アリア。もう一度だけきくわよ。なぜあんなことをしたの?」
食事を終え、一段落した後、ロジーナはなるべく穏やかな声でアリアに尋ねた。
「……」
アリアは口をつぐんだままだ。
「そう。わかったわ。いつまでもそうやって黙ってればいいわ」
ロジーナはそう言い残すと、プイッと部屋から出て行っってしまった。
それ以降、ロジーナはアリアと一切口をきかなくなった。まるでアリアが存在しないように振る舞うようになった。




