アリア、ケーキに騙される
幸せそうにケーキを頬張るアリアをロジーナは眺めていた。
「アリア。そこのお店に行きたいでしょ」
アリアは目をキラキラさせてうなずく。
「ふふふ。予約しといたわよ」
「本当ですか!!」
ロジーナはニッコリ笑う。
「いつですかぁ?」
アリアはケーキで口にをいっぱいにしながら尋ねる。
「初級試験の次の日~」
ロジーナは鼻歌混じりにこたえた。
「へ?」
アリアの動きが止まる。
「特製合格ケーキも注文してあるからね」
ニッコリと小首をかしげるロジーナ。
「ちょ、ちょっと待ってください」
アリアはフォークを置くと、ロジーナの方に身を乗り出した。
「私もご相伴に与れるのかな?」
クレメンスがニヤリとしながら言った。
「もちろん。こぉぉんな大きさのケーキですもの」
ロジーナはクレメンスに向かって両手で輪を描く様にジェスチャーする。
「ちょっと、お師匠様……」
冷や汗を浮かべるアリアを無視して、ロジーナとクレメンスは会話を続行させる。
「ほぉ。それは楽しみだな」
「でしょ~。もちろん名前入り」
「お師匠様!!」
アリアは大きな声で言った。
「ん?アリアどうしたの?」
ロジーナは小首をかしげてアリアをみる。
「初級試験なんて無理です」
アリアは立ち上がる。
「あんたなら大丈夫よ」
ロジーナはこともなげに言った。アリアはブンブンと首を振る。
「大丈夫だって。ねぇクレメンス」
「うむ。アリアの実力ならば問題はない。私も太鼓判を押す」
「でも……」
アリアはうつむき、視線をキョロキョロさせる。
「あら?私のいうことが信用できないわけ?」
「そういうわけじゃ……」
アリアはボソボソと口ごもる。
「とにかく。試験も申し込んで来ちゃったし、今さらキャンセルできないから」
ロジーナは立ち上がるとドアの前に移動した。
「アリア。頑張ってねぇ」
ロジーナはドアを開け、振り向きざまににこやかに手を振ると退室していった。




