ロジーナ、講習会に行く
登場人物紹介(追加)
カルロス・・・師範魔術師。クレメンスの一番弟子。ロジーナの兄弟子。専門は火。
ハンス・・・師範魔術師。クレメンスの弟子。ロジーナの兄弟子。
ロジーナは受け付けを済ませると、『師範魔術師講習会』と表示されている講堂に入った。
ロジーナは師範魔術師になってから講習会に参加したことは一度もなかった。しかし、弟子をとった今は、こういう事に参加しないわけにはいかなかった。
実のところ、ロジーナは今日も参加したくなかった。どう考えても退屈に決まってるのだ。
それに、ロジーナはなるべく他人と関わりたくない。昔から他人とコミュニケーションをとるのが大の苦手だった。
講習会のような人が集まるイベントには、必ずといっていいほどロジーナの苦手なタイプがいる。そういう輩に限って、ロジーナの気に障るような事を言ってくるのだ。そう、ロジーナには幾度となくトラブルを起こしてきたという、苦い思い出しかないのだ。
室内を見渡すと、コーネリアがこちらに向かって手を振っている姿が見えた。ロジーナも手を振ると、コーネリアの方に向かおうとした。
「あれはロジーナじゃないか?」
聞き覚えのある声がした。出来れば聞きたくなかった、聞き覚えのある声だ。
今日はトラブルを起こすわけにはいかない。ロジーナは聞こえなったフリをして行こうとした。
「おーーーい、ロジーナ!!」
兄弟子カルロスのばかでかい声が室内にこだまする。
ロジーナは一瞬げんなりした顔をしたが、すぐに作り笑いを浮かべて、声の方に振り向く。
「カルロス先輩。あ、ハンス先輩も」
普段より一オクターブ高い声で言うと、わざとらしく駆け寄る。
「ご無沙汰しておりますぅ」
にこやかにお辞儀する。
「うわ。ロジーナが挨拶した」
ひょろりとした青白い顔の男、ハンスが大げさに驚いてみせる。
ロジーナは一瞬真顔になったが、すぐに笑顔にもどる。
「いやだぁ、ハンス先輩。私だって挨拶ぐらい……」
「ロジーナっ」
いきなり背中をバンと叩かれる。油断していたロジーナは前につんのめりかけた。
「大人になったなぁ。俺は嬉しい。ガハハハハ」
大柄の男、カルロスが豪快に笑う。
「っつ……」
ロジーナは背中をさすりながらうめく。
昔からカルロスは力の加減というものを知らない。いや、ロジーナを女性だと思ってないふしがある。
奥の出入り口が騒がしくなった。
「会長だ」
ハンスは敏感に反応すると、そそくさとそちらへ向かった。カルロスもそちらの方に気をとられているようだ。
ロジーナは愛想笑いを浮かべながら、一歩二歩とゆっくりと離れる。タイミング見計らい、くるりと背を向け、コーネリアの元に足早に逃げた。
「おつかれちゃん」
「ありがとう」
ロジーナは疲れ切った顔をして、コーネリアの隣に座った。机に頬杖をつきながら、わざとらしく大きなため息をつく。
「今すぐ帰りたい……」
コーネリアはクスクスと笑っていた。




