サーナ、森の中で遊びまくる
よろよろしながら必死についていったアリアは、へろへろだった。
「お帰りなさい。クレメンスとサーナちゃんは? 」
館では朝食の支度を終えたロジーナが待っていた。
「もう少し森の中にいるそうです。食事を先にすませるよう言われました」
アリアはロジーナとルーカスの会話も耳に入ってない様子で、ぜぇぜぇはぁはぁしながら手を洗うと無言で席に着いた。
いつにも増してテンションの低いアリアに、心配になったロジーナは、
「アリア、どうしたの? 大丈夫? 」
と、尋ねてみた。
アリアは目を伏せながらポツリと言った。
「サーナちゃん、ちょっとこわい……」
何があったかは分からなかったが、ロジーナはなんとなく想像できた。
「とりあえず、食べちゃいましょ」
そう言って、アリアの前にスープを置いた。
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ロジーナは朝食を終えると、洗い物をしているルーカスにアリアを託して、自身はリュックを背負って裏山を足早に登りはじめた。
しばらく行くと、ふっとクレメンスの魔力の気配が弱くなった。
ロジーナは首を傾げつつも、微かな気配を頼りに進んだ。
鬱蒼と茂った木立の中にクレメンスを見つけたロジーナは静かに駆けよると声をかけた。
「サーナちゃんは? 」
「しっ」
クレメンスが口に人さし指をあて、ロジーナに黙るよう促した。ロジーナは息をひそめ、クレメンスの視線の先をみる。
木漏れ日に照らされたサーナの姿が見える。
サーナのすぐ横に真っ白な牡鹿がいた。
鹿はサーナの顔に鼻をこすりつけ、サーナは鹿の身体を優しく撫でている。
それはとても神秘的な光景だった。
しばらくすると、鹿は森の奥へと消えていった。
「サーナ殿。ロジーナが朝食を持ってきてくれたぞ」
クレメンスが声をかける。
「わぁ。ありがとうございます」
サーナは跳ねるようにこちらへやって来た。
ロジーナは倒木に腰かけたサーナにサンドイッチの入った包みを渡した。
「美味しいです」
サーナはサンドイッチを頬張り、ニッコリとした。
「それは良かったわ」
ロジーナは微笑みながら、美味しそうに食べるサーナを眺めていた。
「サーナ殿。あの山にも行くか?」
クレメンスは隣の山を指しながら言った。
「いいんですか?」
サーナは瞳をキラキラと輝かせる。
「ああ、気のすむまで遊ぶといい」
「お昼のお弁当もおやつも用意してあるわよ」
「ありがとうございます」
サーナは大声で叫ぶように言うと、ぱっと頭を下げた。
ロジーナはクレメンスとサーナを見送ると、館へと戻っていった




