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ロジーナ弟子をとる  作者: 岸野果絵
見習い魔術師編
10/101

ロジーナ、指導法をかえてみる

 翌日、ロジーナはアリアにもう一度手本を見せた後、一人でやるように促した。


 水柱が上がる。

 アリアはチラリとロジーナを見た。

「大丈夫よ。集中しなさい」

 アリアは視線を水柱に戻し、ゆっくりと魔力を操作する。

 水柱が高くなる。


 ピシャ

 パチャン

 水柱は空中崩壊した。


 怒られる。そう思ったアリアは首をすくめた。

 しかし予想に反して、ロジーナの叱責は飛んでこなかった。

 アリアはゆっくりとロジーナの方をみた。

 ロジーナは顎に手をやり、視線を落とし、考えをめぐらしていた。


 どこが悪いのだろうか。手順のおかしいところはわかったが、どうしたらそうなってしまうのかが分からない。アリアの引っかかりを直してやるには、どうしたらそうなるのかを、ロジーナがしっかりと認識しなけばならない。

 自分が教わっていた時、クレメンスはどのようにしていたのだろうか。他の弟子を指導していた時はどうだったか。ロジーナは過去の記憶を引っ張り出す。

 思い出した。相手の真似をするんだ。相手と同じ動きをすれば見えてくる。


「お師匠様……」

「アリア。悪いけど、もう一回やってくれる?」

「はい」

 アリアは頷くと、再び集中する。


 水柱が上がった。


 ロジーナはアリアの様子をじっと見つめながら、自分も魔力を操作する。

 アリアの水柱の横に、ロジーナの水柱も上がった。が、先ほどロジーナが手本に見せた水柱とはいささか趣が違った。アリアの水柱と、高さも弱々しさもそっくりな水柱だ。


 アリアの水柱の高度が少しずつ増す。ロジーナの水柱も高くなる。


 アリアの額に汗が浮かぶ。

 ロジーナはアリアの動きをじっと見つめながら、その動作をなぞる。


 ピシャ

 パチャン

 アリアの水柱が空中崩壊する。


 ピシャ

 パチャン

 ロジーナの水柱も空中崩壊する。


「うーん」

 ロジーナは唸りながら、もう一度やってみる。


 ピシャ

 パチャン


 この違和感の正体はなんだろう。何かが引っ掛かる。

 一瞬だけ、なにかが垣間見えた気がする。

 もう少しで見える。あと、もうほんの毛筋ほどで糸口が見えてくるはずだ。

 

 ロジーナは何度か再現してみる。

 

 ピシャ

 パチャン


 ピシャ

 パチャン


 ロジーナの目が見開かれる。見えた。

 ああそうか。そういうことなのか。ロジーナは頷きながら、アリアの方を向いた。


「アリア。よく見てて。私のはこう」

 ロジーナは再び手本を示した。


「で、あなたのはこう」

 アリアの水柱を再現した。


「どう?違いが分かるかしら?」

 アリアは首をかしげる。


 アリアにはロジーナが何を言おうとしているのか全然わからなかった。確かに自分の水柱とロジーナのお手本の水柱は違う。だがそれは、自分の水柱はなんとなく弱々しいというくらいだった。


「そう……」

 アリアの様子をみながら、ロジーナは考えていた。

 アリアが違いを感じ取れない状況では、いくら口で説明しても、それはただの机上の空論だ。なんとなくでも違いを感じ取れなければ、ここをクリアすることはできない。

 頭で理解することはわりと簡単だ。問題はそれを身体まで降ろしてこれるかなのだ。感じなければ、腑に落ちなければできるようにはならない。

 どうやったら、アリアは違いを感じとることができるのだろうか。どのようにアプローチしてやればいいのだろうか。ロジーナは思考をめぐらした。


「アリア。もう一度、よく比べてみて」

 ロジーナはそう言うと、二本の水柱をつくる。

「右があなた。左が私」

 アリアはうなずく。

 今度こそは違いを見つけたい。アリアは目を皿のようにして水柱を見つめる。


「ちょっとオーバーにやるわね」

 ゆっくりと二本の水柱は高度を増していく。

「いい。ここからよ。よく見ててね」

 ロジーナはゆっくりと、まるでスローモーションのように水柱を操作する。


 ビシャ

 バッチャン

 右の水柱が崩壊する。


「あ……」

 アリアが声を上げる。

「みえた?」

「なんとなく……」

 アリアはコクコクとうなづく。

「そう。じゃあ、すぐにできるようになるわね」

 ロジーナはアリアにニッコリと笑いかけた。

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