09
「さてと・・・あのぉ~大丈夫ですか?」
雅は先程から倒れている少年に駆け寄り声をかけたが、未だに反応がない…。
(さっきまで気づかなかったけど…。同じ学校の制服だよね?しかもネクタイに青のラインが入ってるから同じ学年だし…。けど見たことないな~)
雅は自分の周りにいる人しか覚えてないので、知らないのは当然だった。しかも、自分のクラスの子さえ全員覚えているかは不確かだ。
しばらく声をかけつつ体を少し揺らしていると少年の目が開いた。
「あっ、大丈夫ですか?」
「……鬼塚…さん?」
「う、うん。そーだけど?」
やっと、目が覚めて今の状況に気が付いたのか突然起き上がった。
「あっっ。鬼塚さんこそ大丈夫?」
「私は大丈夫だけど…」
「あれ?さっきの人たちは?」
「あ、どっかに去って行ったよ?」
あながち間違ってはいない。その理由が雅の蹴り一発で帰らせたということだが…
「そっか…。なんか役に立たなくてごめんね?」
「ううん。守ってくれようとしてありがとね!」
「いや。僕何もしてないよ」
「それでもありがと」
「そーかなぁ?」
「うん…あのさぁ」
「何?」
「名前教えてもらてもいい?」
(私の名前は知ってるようだけど、とりあえず私は彼の名前を知らない…。名前を知らないままじゃ人としてね…。)
「あ、クラス違うし知らないよね?ごめんね。僕は結城 周平 」
「結城くん…。あれ、何で私の名前知ってたの?」
「えっ、あ…、とっ友達が話してたから」
「そーなんだ?」
「うん。…そんなことより時間大丈夫?こんな時間に歩いてたらまた危ないよ」
「えっ、あ!もうこんな時間!!結城くん今日はありがと!じゃーまたね!」
「うん。鬼塚さんも」
2人は別れの言葉を交わしそれぞれの向かう方向に進んでいった。
結城周平くんか…優しかったなぁ~。
また会う日が来るかな?
まぁ学校同じだし、習い事の帰り道だったぽかったし会うよね?
「ただいま~」
玄関のドアを開け声をかけると、リビングの方から母親が顔を出した。
「おかえり雅。今日は遅かったわね」
「うん。今日なんかいっぱいしごかれちゃってさっ!」
絡まれたことは言わない。もし言ったりして、兄の龍児に知れた後どうなるかが簡単に想像つくから。
通わされなくなるのはそれはそれでいいかもしれないけど…。
もし、行きも帰りも送るという選択肢が出てくるのが一番の問題である。
「お疲れさま。ご飯先に食べる?」
「うん!」
「じゃー着替えておいでね。温めておくから」
「わかった~」
2階の自分の部屋へ行き着替えてからご飯を食べたのだった。