その5
その後は店長さんと、リンとアムと4人で多少の世間話をして店から出て行った。
「それで、店長さんに何貰ったの?」
リンは私に聞いてくる、私はそう言われると、箱を取り出した。
「こんなものかしら」
「箱?」
アムがその箱を見て言ってくる。
「ええ、それにこれ」
そう言いながら私は箱からプレートを取り出す。
「プレート、ねぇ」
アムはじろじろとそのプレートに近づいて観察をしたが、すぐに飽きて首をひっこめる。
「よくわからないけど、何かお守りみたいなものみたい」
そういえば勢いで推されたけど、結局これが何なのかはわからない、
それぐらいは店長さんに聞いておくべきだったと少し後悔しながら、プレートを観察する。
よく見ると中にある金属部分に細かい何かが刻まれていて、それでいて側面からみると金属部分は何層にも重ねられている、
また外側の覆ってる透明なものはガラスよりも触った温度は高く、傷ひとつ無かった。
プラスチックにしては妙に硬さがあって、そして重さがある。
やっぱり何かのお守りなのかしら?
少し考えたけど結論は出なく、私はすぐにプレートを懐のポケットにしまう。
「うむむ、いったいどこの文明なんだろ……真作鎧のあった文明の品だったりして」
リンの言葉で、確かにその時代のものの可能性はあるなという考えが出てきた。
写真にしても真作鎧があった文明なら、あんな鮮明な写真が作れるだろうし、プレートにしたって真作鎧のどこかの部品の可能性だってある。
店長さんの恋人も、きっとジパング系の人で今戦場に居るだけ。
でも、だとしたら何であそこまで大切に保管されていたみたいなのに、ボロボロになっていたんだろう……私がそう考えていたその時だった。
ドンっと言う音、私が首を向けると、前に居たアムが誰かとぶつかったみたいだ。
「あいたたた、す、すみま……」
私も、アムも、リンも絶句した、ぶつかったのはいかにもなサングラス姿の紫のスーツを着たマフィアの男、
そしてその左右にはガラの悪そうな男が2人居た。
「……あ、アム?ここってこういう人居ない筈じゃ──」
リンが怯えた顔でそう言おうとした次の瞬間。右側に居た男が咄嗟にオートマチック銃を取り出し、銃声が鳴った。
「え……あ」
唖然とした表情、リンを見ると、足に弾丸が数発あたっていた。
「あぁぁぁぁぁぁぁ!痛い!痛い!痛い!イタイイタイイタイイタイ!」
弾丸はリンの足に当たり、激痛にのた打ち回る。
私の頭の中では恐怖が支配され、言葉が出ない、出たら殺されると本能が告げ、腰が抜けへたり込む。
「うるせぇシナ女だ……」
右側の男はまるで、リンをゴミのような目で見て、もう一発拳銃を撃とうと、彼女に向ける。
だがその銃口ははリーダーと思わしき紫のスーツの男の手に遮られた。
「親分?相手は阿片欲しさに誇りを売ったチャイニーズですぜ?こんなゴキブリ女殺しましょうよ!」
最悪の形容詞だった、私の友達をそんな風に言うなんて。
でも、文句を言ったら私も殺される、そういう気分でいっぱいで、口に出そうにも出せず、涙だけが出てくる。
「我々の目的はなんだ?言ってみろ、チャイナ狩りじゃない筈だが?」紫スーツの男の人はそう、右の男に強く言ったわ、すると、右の男も大人しく銃を下ろした。
少し安心したけど、それでも、また怖かった。
この男に今、命は握られているから。
助けてと叫びたい、でも、周囲には人気が全く無かった。
スーツの男は私達に一歩、また一歩と近づく。
「さてとお嬢様、先ほどの部下の無礼を失礼します。少し……我々と一緒に港にでも行きませんか?」
男はそう、私の目の前に歩み寄り、温和に提案をする。
けど、それに拒否権は無かった。
逆らったら殺される。
そう、さっきの銃弾で私達は完全に心を死の恐怖に支配されていた。
動くことすら、できなかった。
「……沈黙は了承。さて、それならこのお嬢様方を連れていくとしようか」
紫のスーツの男がそう言うと、私の後ろからがっしりと、痛いくらいに誰かが掴む。
けど、私は抵抗できなかった。何も、そう、何も。
流されるままに私達は縛られ、車のトランクに入れられ、そして、エンジンの音が響く。
私とリンとアムは別々の車に乗せられ、別々となる。
闇と肉体の拘束、そして銃の恐怖と孤独の恐怖、暴力の恐怖が体を支配して思うように動けず、震え、そして気づけば私は失禁していた。
この時は恥ずかしい何て事は考えてなかった。
ただ、凄い怖かった。
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