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蒸気ロボット仮想戦史 ゴールドラッシュ&ゴールデンエイジ  作者: 白金桜花
最終章:大決戦!大団円を手に入れろ!
54/58

その2

塔の入口の扉は逆卍党、或いはアレン達の手で強引に壊されており、その中へは蒸機鎧でも簡単に入れる場所であり、至る所に蒸機鎧の残骸が散らばっていた。


少し進むと、巨大なエレベーターと思わしき何個もの扉が、六角柱になるような形で配置してある巨大な空間にたどり着く。

警戒しつつ扉に近づくと、扉は自動で開かれ、その中に私は入る。


スッ、という音と共に扉が閉まり、エレベータは自動的に降りて行く。

操作板等はない。恐らく、中枢かこの居住区かの2通りしか行けないのだろう。

がたんごとんという、デパートのエレベーターのような音もなく、ただ扉の上には下に降りていると示す表示があるだけ。


そんな中、私は考えていた……

この遺跡には、違和感が多い。

まず、街の中を見たけど、人が生活していた跡がなかった。

まるで人が住むことを想定していたけど、それでも誰も住まなかったみたいに、広告も車も何もない、無機質なビルだけがある不気味な無人の世界だった。

次にこんな浅い層に眠っていた事……まぁ、昔別の地層に埋まってたのがまた何かあって沈められたって可能性もあるけど……それにしても発掘された場所が妙に規模に対して浅い気がするわ。


最後に気になったのは……こんな形状の戦艦は、夢では見たことがなかった……本当に私が寝てた時に見たのが、夢ならそれで良いのだけど……何か、嫌な予感がする。


リチェット達からの連絡は来ない。

勝っているのなら連絡がくるはず、だとすれば、戦闘が継続しているか、負けているかだ。

私は希望的観測をする、あの程度で負けるような人たちじゃないと、私だってあれぐらい倒せる訳だし、ジパングの人たちも居れば一騎当千よ……


そう自分に言い聞かせながら、MAOSによって資格化された情報を確認する。

まず120mm自動砲の弾数を確認……残り24発、無駄弾は撃たない様に戦ったけど……弾切れしたら本当にただの銃剣ね。

機体本体の疲労は殆ど無いけど、クロススラスターの疲労度はものすごい蓄積していて、黄色の十字架が赤く点滅している……これもあれだけ使えば、よく持ったものよ。

機動性を落とさない様にとにかく推進器をとりつけ、更にキャリバーと同じで3つの蒸気エンジンを使った代物。

それでいて急なスラスター機動を可能にするための稼働ギミックを搭載した、兎に角詰め込んだ急増品……これまで爆発しなかったのが幸いよ。


機体の情報を確認した後に、エレベーター少し急上昇した感覚が起き、その後エレベーターの動きは止まる。

<ユーザー03への量子観測エフェクトを検出しました、ジャミングをかけますが注意して下さい>

MAOSから文字が表示される、けどそれが何なのかはちょっと見た事無い文字だったため読めず、私はすぐに120mm自動砲を正面に構え、そしてエレベータのドアが開いた瞬間、引き金を引く……!

爆音、だけど視界の先には広大な空間があるだけで、何もなかった……けど、着地音が聞こえる……蒸機鎧の駆動音だ。

周りにはアレンの仲間と思わしき機体と、逆卍党の機体の残骸が散乱している……凄惨ね、まったく。

「私から見て右側、居るのは分かっているわよ」

敵に私は語りかける……意味があるとすれば、威圧だ。

だが、敵は沈黙を続ける……敵は気づかれないとでも思っているのかしら?それとも、待ち伏せ……?

どちらにしても、厄介な敵だというのには変わりはない。

私は腕からぶら下げているワイヤーダガーを、腕を動かし前方に高速で飛ばす。

手練れの戦士なら反射的に何らかの反応を行う……牽制にはなるはず。

だけど、ワイヤーダガーに対し敵は反応も示さなかったため、すぐに私はワイヤーダガーを格納する。

……私の手の内が透けて見える手練れか、それともただ、怖がって何もしていないのか……恐らく前者ね。

だって怖がったのなら、驚いてペダルか何かが動く音が聞こえる筈。

だとすれば、今ここで足を踏み出すと言うのは危険……

沈黙、2機の蒸機鎧の駆動音だけが周囲に鳴り響き、エレベーターの扉は開かれたまま……嫌な間ね、情報が少ない、相手の手が見えないというのは最悪よ。


私はMAOSの文字を確認する。

<ユーザー03への量子観測エフェクトを検出しました、ジャミングをかけますが注意して下さい>

敵意の強い……なんたら観測エフェクトを検出と書かれているのは解るわ……だとすれば……相手は何らかの力を使って、私に関する情報を観測している……?


次の瞬間、敵が床を蹴り、跳躍する音がした。


私はすぐさま直進するために地面を蹴り、エレベータから出て、左側に推力を集中させ急加速し吹き飛ばされながらスラスターを利用し急旋回する。

<警告!警告!クロススラスターの負荷増大!これ以上の使用は危険です!>

警告文が増え、スラスターの図形が赤く染まる。

だけどそんな事は知ったことではない私は旋回しながら敵機を見据える。

敵機は紅い、ゼロと同じぐらいの大きさの東洋甲冑的な機体だった。

その敵機の手に持った2挺の大砲が、私を捕捉していた。


「──っ!」私は即座に、その機体に機関砲を向ける。


早撃ち勝負、相手の胴体に当てるか、先に撃てば敵は動揺し照準はブレる……!


ほぼ同時に砲弾の音が鳴り、私のボディすれすれを、2発の砲弾が掠める。

私が放つ砲弾は敵機のボロボロの右肩に当たりそのまま腕を弾き飛ばされ、その衝撃で敵機は吹き飛ぶ……

そして私はこの敵機が何を私にやっているか推測する……恐らく、この機体は私の動きを、心を、未来を読んでいる?。

要するに動きや手の内が読める……だけど完璧に対処はできない、蒸機鎧は人間が操作するもの、精密機械でないが故に情報の解析から反応が追いついていない……

今の砲撃が掠めたのも要因の一つ、とっさの対処ができない……!


「ええいジャミングが鬱陶しい!矢張り量子観測などと言う魔道力は使い物にならぬか!」

<ユーザー03への量子観測エフェクトの消失を確認しました>

吹き飛ばされた紅い敵機から、若い女の子の声がした後、MAOSの表示が別の表示に変わり消えた……推測するに、なんたら観測エフェクト……心を読んでると思わしきあれが消えたのかしら?


だが、事態は好転どころか悪化した。


敵機は先程の動きとまるで別人が私の追撃の砲撃4発を回転しながら残った片腕と両足の背面につけられたスラスターの軌道で回避する……ひょっとして、小細工を使ってた時の方が弱かった?

「小細工頼りなんて情けないわね……ここからは撃ち合い、そちらの装甲でどれだけ持つかしら……!」

相手の冷静さを殺ぐ為に、見え透いた挑発台詞を吐きながら砲撃するが、敵機はスラスターの推進速度を調整し、不規則に動き回避される。

対する敵機からの砲撃も私の居る位置から大分離れた壁にあたり、ゼロの装甲を抉ることは叶わないでいた。

グラブスティックの操作で通常、戦闘機動を行わないで銃撃する理由はそうでもしないと命中精度が下がって仕方がないというのに……

それを知らないで銃を使うのは腕だけは達者な実戦素人?それとも──



そんな雑念が脳裏を過ぎった次の瞬間、私の右肘から、前腕部にかけてが吹き飛んだ。



<警告!右肘部完全破損、前腕部が吹き飛ばされた事から搭載兵装の使用は不可能になりました!>

吹き飛び、強引に振り回されたボディをスラスターを使い、強引に体制を取る。

下手な射撃は油断を誘う為のフェイク、本命による一撃を叩き込んだ……!?

希望的観測が相手によって誘われたものだと感じ、屈辱感が脳を染める。

私の射撃武器がなくなったのを確認するや否や、目前に居る蒸機鎧はホバリングの後着地し、そして私と正面から向き合う形となる。


恥辱は消え、今度は緊張感が脳を侵す。

思わぬ強敵との遭遇、敵は120mm砲をまだ一丁持っている、対する私の持っている飛び道具はワイヤーダガーだけ。

腰につけたリボルバー型の120mm砲は既に撃ちつくしており、120mm機関砲はついさっき吹き飛んだ。


絶体絶命の危機、こんな所で志半ばで死ななければいけないのか、いや、何か起死回生の手があるはず。

敵は120mm砲の砲身を床に向けている、それが私の方に射線を合わせた瞬間、避けて接近戦に持ち込む……そうすれば、やれる……


「使えないな、こんなものは」

だが、敵の少女は120mm砲を一瞥した後、まるで玩具に飽きたかのように投げ捨てた。

「……大した自信ね、わざわざ勝機を逃すなんて」

「戯れを、どうせ今撃ったとしても初弾は回避され私は刀を抜く前に貴様に死ぬだろう?私は銃の類など使ったことなど殆ど無いからな。それにだ、サムライたるもの決闘は刀でやるものと相場が決まっている。我が名はカグラ・タケダ。機体は紅刃ノ孫六、貴様の名前を名乗れ」

そう言いながら彼女は、紅い蒸機鎧……孫六は帯刀したカタナを抜く。

構えは中段、私から向け半身にし、突き出した右足と供に右腕を突き出す形だ。

そして私の方をまるで睨むように注視し、様子を伺う。

私は構えなどしなかった、正面から敵を見据えるだけ。

下手に動こうものなら、先手を取られかねないから、そして近接戦闘の切り札である、スチームパイルは正面から敵を受け止めてこそ、対近接専用武装として真価を発揮するからだ。


静寂、大典太との戦いを思い出す睨み合いが始まる。


敵はスチームパイルの存在を知っていると仮定するなら、恐らく正面からの切り合いを避けるだろう。

恐らく、スラスターの機動は吹き飛ばされた時姿勢を立て直す為に利用するか、回り込むために使うのがメインだろう。

だとすれば、相手はまず直進、そして私の腕が壊れている左側に対して攻撃を放つ。

すれ違い様の攻撃か、おそらく回り込んでの攻撃だろう。

なら、私がやるべき行動は単純だ。

「刀を抜き構え名を名乗れ、米国人は決闘の流儀も知らないのか?」

カグラと名乗った少女の声、敵の声だ。

構えろ、決闘の流儀。それらの言葉は相手への挑発と見るには、今までの行動、言動はあまりにも一本道で、正々堂々とした言葉であった。

だが、私は軍人であり剣客でもサムライでもない、付き合う道理は皆無。決闘の流儀に反して得た勝利だろうが、勝利と受け取る生業の人間。

「キャロル・ホリディ。機体名はゼロよ」

だが、私はカタナを抜いた。

構えは同じく中段。敵は正面から来るわけがない。なら、出来るだけ臨機応変に対処できるための構えとし、右腕と右足を前に出す形となる。


剣を互いに構え、睨み合う。


いやな焦燥感が頭を支配してくる。

敵は出方を伺う、私も出方を伺う。

動かない、互いに、動かない。

構えとはそもそもが攻めのためのものでなく、守りのため……カウンターや、相手にどのような攻撃をさせるのか誘導させるためにある。

切りかかるとなれば構えなんてすぐ崩れるし、そうなれば守り側の方が優位に立てる。

私にはワイヤーダガーがある、だけど、相手にも近接戦闘で勝てるという自負がある……つまり、何か隠し弾がある可能性もある。

仕込み式の大砲、はたまたアレンのように胸部から光線兵器を撃つかもしれない。

慎重に様子を見る、敵の隙を突くように……先手で正面を捉え、叩き潰す。

相手の攻撃を待つのは相手のペースを与える下作、ならば先手で潰すが上策それが生き残る手段、アレンと対決する手段……!

敵の腕が僅かに震えた気がした。

孫六の集中力が落ちた、そう判断した私は前方に向け脚力のみでやや水平に跳ぶように地面を蹴り、地面スレスレを滑空するように飛びながら右腕を正面から見て斜め右の方向に射出。

「……!?」

私は間髪入れず、孫六の右側から凪ぎ払うようにダガーを叩きつけた。

だが相手も一筋縄ではいかない、敵はスラスターの力で急加速しダガーの攻撃を潜り抜け、そのカタナの縦の一撃でワイヤーを切断しつつ接近する!

「女々しい小細工をっ!?」

敵の拡声器越しから伝わる言葉に対し、私は沈黙で返す。

攻撃の手は緩めない、敵の振り下ろされ下段となった所から飛んでくる突きをカタナで受け止め、同時に必殺のスチームパイルを叩き付けようと起動する!

だが、敵もそれでやられるほどタフじゃなかった。私が起動しようとした瞬間、敵は私の左側に回りこみローキックを放ち、転倒を誘う。

<警告、左脚部損傷!人工筋肉活動率5%低下!>

パイルが空振りし、更に崩れそうになる体勢を立て直した隙に敵機は横からカタナで切りつける、それをカタナで受け止めつつ背後に跳び、体勢を立て直す。


「隠し武器など何処までも姑息な!貴様にはサムライの流儀というものはないのかね!?」

「使った武器は全部近接武装よ?文句はある?」

問答、仕込み武器に腹が立てたみたいだけどこのぐらい想定済みだと思ってたわ……面倒くさい相手ね!

「無いさ。むしろ感謝をしてるぐらいだ、気持ちよく殺せる相手ではあるからな!」

その瞬間、敵機の腹部から格納されていた二本の長い、まるで蛇を思わせる副腕が展開される!

副腕は手甲に仕込み式の両刃刃を搭載……キャリバーのワイヤーダガーのような射出能力はなさそうだけど、それでも威圧感は抜群。

スチームパイルを下手に使っても、あちらも似たような切り札があるのならきついわね……


そうして、戦いが再開される。

今度は孫六の方が攻勢に移り、孫六はまるで猛獣のように飛び掛る。

上から振り下ろされ、重量を乗せたカタナにカタナでぶつけ合い、再度スチームパイルを叩き込まんとする。

だが相手の方が先に動く、副腕の両刃剣で両脛のスチームパイルの格納部を縦に切り裂く!


<警告!両足部スチームパイルの杭部及び正面装甲貫通!使用は危険です!使用は危険です>


しかしパイルの発動はとめられない。裂かれた脛部前面の装甲から蒸気が噴出し、孫六と私の視界を靄で覆う。

その隙を私は逃さなかった。私は敵機に対しケンカキックをたたき付け吹き飛ばし、距離を離そうとする。

「ちょこざいなぁ!」

だが距離を離される前に孫六叫びながらは副腕を伸ばし、私に対し突きを仕掛けようとする!

まずい、そう考えた私はそれに対し咄嗟に振り下ろされ下段となってたカタナを回し、返しの刃で一閃し、接近した副腕はたたき切られた。


そして吹き飛ばされ、体勢を立て直した孫六とまた睨み合い……敵の方もとうとう武装はカタナ一本となった。

私は右腕が残ってる、相手は左腕、運よく利き腕が残ってるけど、相手もいままでの剣捌きを味わえば、両手利きなのだと大体は察せるわね……

状況は不利ではない、終始互角。私が腕を壊せば相手も腕を壊し、相手が隠し武器を壊せば私も隠し武器を破壊する。


気持ち悪いぐらいに拮抗していた。


だけどそれも、恐らくはもう互いに戦える武器は片腕しかない。

人間ならすでに出血多量で死んでるような凄惨な戦い。

だけど、戦うこの身は鋼の身。死なずに戦い続けるしかない、それが蒸気仕掛けの鎧を着た騎士の宿命。


柄にもないポエムが脳裏に浮かび、そして戦いはまた再開される。

今度、先に動いたのは動いたのは孫六だった。

何で動いたかを考察する、私の剣戟戦術ドクトリンは基本的に後の先を取るカウンター戦法。

敵の太刀筋から攻撃を考察し、回避し反撃に移る手段……ここまで書くのなら攻めに徹するのは下策中の下策。

だが私の剣が攻めに転じた場合、おそらくだけど、互角の馬力である孫六とではこのように受け止めるだけが精一杯であり、蒸機鎧の制御にしたって機械の体の私と生身の敵ではスタミナの差が出る。

だとすれば、孫六の用いる剣戟戦術ドクトリンは恐らく……フェイントを織り交ぜた攻撃を兎に角討ち、私の反撃の機会を奪う事。

案の定、孫六は上段から振り下ろす攻撃をフェイントとし、すぐに横から薙ぐような一撃を放ち、私はそれに対しカタナで受け止め、弾かれる前に、弾く前にそれぞれ刀を引き、そして再度振り襲い来る孫六の剣を受け止め、互いにカタナを撃ちつけ合う。

構えもクソも無い剣戟戦チャンバラ、最早互いに次の手に対する手を打たなければいけない血を吐くような陸上競技デスレース

常人なら高揚感を湧く戦いだろう。


だが、私は冷淡にその剣を返し、敵に対する死への一撃を渇望していた。


私の敵は孫六なのではない、アレン・ウォラック……父を殺した男だからだ。


「何処で剣を習った?」

「答える義理は無いわ」

剣を打ち付け合いながら敵の問いに冷淡に返す。繊細な感情の動きが死に繋がる、関係のない会話は注意を逸らす為のフェイント、なら、適当に流すのは上策。

物理的、心理的にもフェイントを互いに交え、刀を打ち付けあい、立ち止まれば互いに足技を仕掛ける戦い。

縦横斜めと孫六の刃が飛び、私はそれを軽く流しながら引き、隙ができたら蹴りこもうと互いに動き、足技を叩きあいそして互いの剣を戻し一撃を叩き込もうとすればどちらかが飛び退き、蒸機鎧の瓦礫の上を飛びながらの剣戟戦となる。

しかし互いに踏み込まない、フェイントを交えた一撃に当たれと願いを込め、回避されるのみ。

隙が出来る暇もなく、隙を突く暇もない戦い。


千日千手、戦いが終わらないのではないのかという不安感が脳裏を支配する。


何故?理由を考察する、答:踏み込まないから。

何故踏み込まない?理由を考察する、答:敵の反撃が来る危険性があるから。

考えるまでも無いことであり、敵もまた同じであった。


だが、そんな永劫にも思えた剣戟戦にも終わりが訪れる。


「ええい!埒が開かない!」

孫六のパイロットは焦りを声に出しながら背後に跳び、そしてその後スラスターを全快し、上昇しこの広大な空間を縦横無尽に飛行する。

孫六の放つ手は飛行し、加速を込めての突撃戦法……私のスラスターで対抗する事も可能だけど、不安定なスラスターを酷使するのは避けたいので私は止め、そして刀を中段に構え、耳を澄ます。


孫六の一撃を防ぐため、受け止め、踏みこみ、致命打を与えるためにだ。


紅い機体が頭上を飛ぶ、一撃は来ない、フェイントだ。


フェイントを交え、そして相手が疲弊した所に突撃するのが敵の戦術。


現在の状況、喩えるならば孫六は騎馬を用い私を殺さんとする紅の騎兵。対する私は愛馬がボロボロとなり、馬から降りて戦う歩兵。


有利は孫六、不利は私。

MAOSに表示されたピクトグラムでは全身が黄色となっており、今までの戦いの疲労が目に見て解る惨状ね。

でも、私はそれでも希望を見出し、敵の本命打を感じ取ろうと全神経を集中させ……そして、本命打がやってきた。


孫六は正面から私にカタナを振りかぶり、切り裂かんとする。


私はその刃を正面から受け止める。


<警告!警告!右腕部負荷増大!危険です!駆動率現在40%!危険です!>


右腕に衝撃が流れ、ピクトグラムで腕が赤く染まる。


けど、私は嗤っていた。


何でって?それは単純……勝利を掴んだから。


死闘の末、勝利を掴んだからよ!


私はすぐに打ち付けた剣を左に流し切り払う、そして私はそのまま、腰を踏み込み、切り凪ぐようにカタナを振り抜ける。

「なっ!?」

敵も腕は悪くなかった、けど、その一撃が致命打となり、孫六が行った加速が私の一撃を更に増大させ、急に止まらぬまま胴体が両断され、吹き飛んだ。

そうして、長い戦いは終わったのである。



「終わった……の?」

私は自分に言い聞かせながらも周囲を警戒する。残骸の中に生きてる存在がいるかもしれないからだ。

漁夫の利狙いなどおかしくもない、意地汚いは戦場では最高の褒め言葉であるから。

そしてそれも杞憂と感じるやいなや敵機がすでに駆動していないことを確認すると、ゼロで敵機のハッチをこじ開ける。


「……っ」

そこには、黒い髪の……私より一回り年下の軍服姿の少女が、私を睨み付けていた……さっきの衝撃は機体を壊すだけで、中の彼女は無事……きっとこの蒸機鎧、パイロットの保護に相当力入れていたのね……

「私の勝ちね、早く投降して鍵を渡しなさい」

流石に子供を殺すのは気が引けたため、私は投降を促す。

「……殺して奪えばいいではないか、早く殺せ!トシザネのように……殺してくれ」

涙ぐみながら、彼女は叫ぶ……トシザネって……あの大典太のパイロットよね……

「……トシザネ?」

「そうだ……私が好きだった人……それをお前は……お前は……!」

その言葉に、戦いを終えで熱が去った私はどきっとした。

彼女はあの男の仇を討つために、私を殺そうとした……私がパパの仇を討つ為に、アレンを殺そうとしたように……

私は考える、この機体で彼女を握りつぶせば、私は彼女にこれ以上狙われる事がないだろう……

だけど、後味は最悪、自分が結局、アレンと同じような境遇になるどころか、一生子供殺しの業を背負うわけだ。


「……私は子供を殺す気は無いわ」

私は正直に言う。甘いと言われようが自分の精神衛生上の問題だ。

殺さず投降させて、後は豚箱にでも入れた方が気分がいいわ。

「……お前の部下を殺したぞ、何人もだ……変わった蒸機鎧の男もだ……」

変った……ビルの機体かしら?

「……それで?それなら貴方の好きな人も殺したし、部下だって何十人単位で殺したわ。いいから投降しなさい、しないと殺さないけど、痛い目見るわよ?」

……私が怒り狂うとでも思ってたのかしら……確かにビルが死んだのはショックだけど、恨んで怒って冷静さを失うほどの付き合いではない……冷たい言い方だけど、戦いに出た以上、戦死するのぐらい想定しているというのに……

「……矢張りお前には人の心も無いのか!鬼!悪魔!いいから殺せ!早く殺せ!どこまでもサムライの情けというものはないのか!」

少女が腰に持ったオートマチック式の銃を構え、泣きじゃくりながらも何発もゼロの装甲に向け撃つ……けど、そんな拳銃は私の機体の装甲をかすりもしない。

何発も撃っていると、すぐに弾切れが起こる……それを確認すると私は、機体との意識接続をカットし、機体のハッチを開いた。

「……っ!」

少女は私に弾切れした銃を向け、睨みつける……構図としては、私が見下ろす形よね……

すぐに私は少女の居る場所に、難なく飛び降り着地して、少女の手を掴み、手首を捻る。

「いだっ!」

少女が痛がっている間に、私は彼女のシートベルトを外し、ひねる為掴んだ片腕で持ち上げる。

そして片腕で彼女のポケットを探り入れ、鍵が無いか調べ上げると、胸ポケットに昔……私が死んだ日に見たカードのようなものが見つかった。

「そ!それは……!」

「貰って行くわよ」

そう言って私は片手でカードを折ろうとするけど……ダメ、力が入れても曲がらない……仕方が無いから私は腰のポケットに、そのカードを入れた。

そして私は腰にあった、緊急捕縛用の手錠を取り出し、彼女の両腕に強引につけた。


「殺せ……殺せ……」

「自決だったらあの銃で出来たでしょう?楽に死のうなんて考えない、いい?」

「生き恥を晒せと言うのか……」

「私だってこんな体のせいで旦那を走って探さないといけなくなったわ、ある意味これも生き恥でしょう?」

涙ぐんだ顔で彼女は黙り込む……はぁ、面倒くさそうなの拾っちゃったわね。

私は彼女を抱え、機体に乗り込む……誰かに来夏のところまで届けてもらいたいけど……

とりあえず座席の後ろの非常用の補助席に入れて、私は意識リンクでなく、既存の通常操作で移動する事にした……あの操作法だと私は大丈夫だけど、この子が衝撃に耐えれず危なそうよね。

それに、あの子が万が一変なことをした時、意識が機体の中だとやっぱり危ないわよね。


ベルトを締め、機体を起動し、グラブスティックを軽く握る。

真っ暗なモニターがすぐに外の情報を表示し、私はフットペダルを動かし立ち上がる……この感覚も久しぶりよね、ブランクが無きゃいいけど。

私はすぐに音声通信のスイッチを上げ、今回使う周波数に目盛りをあわせる。

「こちらデルタのキャロル……敵リーダーの確保および鍵の入手を完了、そっちの調子はどう?全滅してないなら一言お願い」

「……こちらリチェット……え、ええ、何とか撃退は完了しましたわ、すぐにこちらに戻ってくれません?戦力の再編を行った方がいいと思いますわ」

リチェットの声が震えた気がした……でも、気のせいよね……大体負けて捕まっているなら私の方も人質が居るはず、アレン達はこの奥に潜んでいるし、大丈夫な筈よ……

「分かった、けど私の機体もボロボロだから、補修の後すぐに戻るわ」

そう私はリチェットに告げた後、孫六の方に足を向け、近くで座り込み、機体から工具箱を持ち出しコクピットを降りる。

孫六の状態を確認、丁度上半身が残っており、左腕も残っている、使えそうな感じだった。

私は工具箱からレンチのアタッチメントを取り出し、自分の生身の肉体……と言っても機械仕掛けだけど、の片腕を引き抜きまずは大型レンチのアタッチメントを引き抜いた腕に接続させる。

<本体腕部ユニットの交換を確認……レンチ型アタッチメントのドライバを使用します>

MAOSの表示が出て、接続された事を確認する……こういうのは機械の体だから出来る代物よね……そう考えながら、孫六のボディとの接続部を確認し、キャリバーと同じ規格なのを確認する……

まぁ、どれもオリジナルを基に作った贋作レプリカなのだから当然だけど、腕が取れたら適当に他機体の腕をもいで使うというのが出来るのは便利な所よね。

私はそうして、孫六のボディから左腕を外す作業に移った。

レンチを使い、まずはナットを外していく。

「……貴方、名前は?」

作業の合間、私は彼女に名前を聞く。

「……カグラ、さっき言わなかったか?」

「人の名前を覚えるのは苦手なのよ。それにしても私が言う言葉じゃないけど、若い指揮官ね……」

そう言いながら、次にドライバー型のアタッチメントに交換する。

<腕部ユニットの交換を確認……ドライバー型アタッチメントのドライバを使用します>

MAOSの表示が出て、正常に接続されたのを確認したら腕を回転させて螺子を抜く。

この回転する腕は人間相手に使ったら死人が出そうよね……

「総統閣下から才を認められたからだ、お前のような怪物とは違うよ」

「……怪物、ね……仲間にもよく言われるわ」

「否定はしないのかい?」

「客観的に見て化け物なら、別に化け物でもいいわよ?私としては可愛い化け物だと主張したい所だけど」

そう言いながらドライバーで螺子を抜く私、客観的に見ても奇妙な姿だけど考えないことにしよう。

「はぁ……」

溜息をついた後、カグラは黙り込む、私を怒らせる嫌味の言葉でも考えてるのかしら?


私は作業を続け、今度はチェーンソー型の腕に交換し、ドアの破壊にも使えそうな代物で食い込んだ装甲を切除し、そして孫六の腕を引き抜く。

孫六の腕を取り外すと、今度はゼロの壊れた左腕を外し、そして孫六の腕を接続する作業に移る。

MAOSの肉体補助があるから出来る芸当だけど、本来は蒸機鎧1機が必要な作業なのよね。

「……それにしても整備って結構疲れるわよね……聞いてくれる?」

これまでにやった作業を逆再生するようにゼロに孫六の腕を交換しながら、私は語る。

「……好きにしてくれ」

「そう、なら好きに話させてもらうわ……私が軍に入ってまでやろうとした事って、要するに復讐だったのよね……パパを殺した南軍残党のリーダーのアレン、そして私の友達を浚ってひどい目に遭わせた逆卍党……どっちもひどい人たちよ私にとって、辱められた人もいっぱいいた、解放した施設で奴隷のように使われて心が壊れた人も居た……貴方は逆卍党の指導者の一人として、思うところは?」

「そんなものなど無い、貴様ら白人が植民地に行った圧政に比べれば幾場かマシなものだよ」

「まるで台本通りの言葉ね」

私は正直に言う。彼女の主張はどこか、誰かの真似のような、本心でない、そんな感じがした……

「台本通りで何か悪いかい?私の本分は台本家にして演劇役者だよ」

「じゃあ、本心はどうなのかしら?」

「どうでもいい」

カグラは冷淡に返す。

「どうでもいい?じゃあ何でこんな事をしたの?」

「それは尋問かい?」

「ただの個人的知識欲を満たす為の質問よ」

「単に総統閣下が面白い人であり、面白い考えだったからだよ。面白いじゃないか、ジパングの停滞した印度シナ戦線を打破するためのクーデターなんて」

「最低の愉快犯ね」

「君のような悪魔に言われるのなら、それは天使に等しいという意味だろうね」

カグラはにやにやと皮肉を返す……さっきまで喚いてたのにすぐに立ち治したわね……

図々しいと言うか何というか、普通に党の理念思想に感銘を受けて戦ってる人がこの言葉を聞いたら怒り狂うんじゃないかしら?

「私の神経を逆撫でするために言葉を選んでる?」

「そうさ、私にとっては思い人の仇なんだ、気が散って死んでもらえれば幸いだよ」

カグラは即答する、このまま話しても埒が開かないと考え、私はゼロの左腕部の移植交換が終了し、コクピットに乗り込みまともに動くことを確認した後そのままエレベータに乗り込んだ。

エレベーターの上昇音と、機体の駆動音だけが鳴り響く状態が少しの間だけ続き、そしてエレベーターは一瞬下降し始めたたかと思ったら停止し、そして自動的に扉が開く。



「よう、残念だったな」



扉の先には、黄金の蒸機鎧率いる南軍の亡霊……そして、背後に120mm砲を突きつけられた、仲間達が居た。

詰めが甘かった、逆卍党だけじゃない、南軍残党は他の出入り口から入った……だとすれば私達の交戦を見抜き、漁夫の利を得ようと疲弊した私達を叩こうとすることもできた。

そう、真っ先にその光景を見た私は思った。


結構な間更新停滞してて申し訳ありませんでした。

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